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調査PRとは?【手法編】|読みたくなるリリースのポイントは3つのヒ!

企業/ブランドのコミュニケーションの意義や背景を、データで可視化する「調査PR」

前回、調査PRの【基礎編】として、「調査PRとは何か」「どのように調査設計をするのか」などについて解説しました。

しかし、実際にやろうとすると、
「調査をしてみたものの、発信の仕方が分からない」
「発信しているのに、メディアになかなか取り上げてもらえない」
「調査からリリース以外の取り組みや企画につながらない」
といった、調査データのアウトプットの仕方について悩む声も聞きます。

今回の記事では、調査PRの【手法編】と題して、調査データの効果的な伝え方と使い方について、ポイントをまとめました。

調査リリース【基本の2つのコツ】

調査PRとは?
企業/ブランドの商品やサービスに関連する、生活者の傾向や社会の潮流について調査を実施し、その結果を活用したコミュニケーションを行ったり、その商品やサービスが解決できそうな世の中の問題を提起したりするPR手法の一つです。

調査PRで最もよく使われる発信方法の一つがプレスリリースですが、データをそのまま並べるだけでは、伝わりづらいこともあります。

今回は、メディアや生活者に関心を持ってもらいやすくするために、〔1〕調査リリースを読みやすくなるコツ と、〔2〕調査リリースを読みたくなるコツ を紹介します。

〔1〕読みやすくなるコツ:共感⇒驚き⇒納得の3ステップ

調査リリースの構成として、「(世の中の)現状→課題→解決策」の順に情報を提示するのがオススメです。

現状を提示することで読み手に、なるほど!あるある!知りたい!といった「共感」をつくった上で、「驚き」を伴う課題を浮き彫りにします。そして、解決策としてのサービス/商品に「納得」してもらう、という3段階を踏んで整理していくと分かりやすくなります。

例えば、食材のデリバリーサービスを提供する企業が、感染症拡大に伴う自粛期間と料理について調査を実施すると仮定してみましょう。

❶現状の提示(共感)

まずは、世の中の現状を広く捉えた調査データを紹介し、読者に「うん、そうだよね」「やっぱりみんなもそう思ってるんだ」と共感してもらいます。

例:「⾃粛期間で料理をする頻度が30%増加」(数字は例)

❷課題(悩み/意識)の提示(驚き)

「現状の提示」のトレンドからもう一歩踏み込んで、「え?そうなの?」「問題はそこなんだ?」という意外性のある課題や、「言語化されてなかったけど、言われてみればたしかに」というような課題を提示することで、驚きや気付き、発見感を持ってもらいやすくなります。

例:「テレワーク中の料理の悩みの6割は『買い出しに行く時間がない』」(数字は例)

❸解決策の提示(納得)

深掘りした課題から、解決策を提示します。企業が生活者にサービス/商品を提案するに当たり、企業の一方的な視点ではなく、生活者/世の中の視点も取り入れ、それが生活者に伝わることで、納得感が生まれます。

例:「『定期的に⾷材が家に届いてほしい』と思うと答えた⼈は7割」(数字は例)

まとめると、下図のようになります。

調査データはさまざまな項目や数字が出てくるため、難解な内容になりがちです。こうした3段階で情報を整理すると、ストーリー性を持たせることができ、読みやすくなります。

〔2〕読みたくなるコツ:メディアフックは「3つのヒ」

プレスリリースは、記者の関心を引くような“フック”がなければ、なかなか取り上げてもらえません。ここで、「メディア=世の中」が興味を持つフックを作るコツを、3つの「ヒ」として紹介します。

3つの「ヒ」は、調査データを発信する時に初めて意識するのではなく、調査を設計する時点から意識しておけることが望ましいです。

❶ヒカク(比較)

属性ごとの差を浮き彫りにします。全体だけでなく、性別や年代、地域などで区分して集計し、比較することで「差」を可視化します。属性によって意識や行動にどんな違いがあるのか特徴を捉えることができます。

例:自粛期間に料理をする頻度が「全体では30%増加」「女性の25%増に対し、男性は35%増加」「30代以上より10~20代の若年層の方が増加した割合が大きかった」など

❷ヒラキ(開き、ギャップ)

世の中の“常識”と「開き」(ギャップ)のある内容や意外性を明らかにします。順当な調査結果よりもギャップがある方が、ニュースになりやすい傾向にあります。特定の県で顕著な結果が出れば、その地域の地方メディアに大きく取り上げられることも多いです。

例:自粛期間で料理をする頻度は、「全国では増えているのに、○○県では減少」「東日本より西日本の方が増加傾向」「増加1位は△△県、47位は□□県」など

❸ヒトコト(一言)

調査から見えてきた発見や気付きを「一言」で表します。これまで言語化されてこなかったもので、何を表しているかみんなが分かる言葉として一言で表せると、広がりやすくなります。

例:「隠れ○○」「○○人材」「○○不足」など

調査PRはプレスリリースだけじゃない!

ここまで、調査リリースの発信(書き方/伝え方)のポイントを解説しました。一方で、調査データの使い方はリリースのみにとどまりません。調査データを起点に、さまざまなコミュニケーションへと広げていくことができます。

例えば、広告やWeb動画などでも、一目で分かりやすい調査データの「数字」を活用することで、インパクトをもって伝わりやすいというメリットもあります。さらに、調査データを世の中に伝えた後に、そのデータを起点に各コミュニケーションに展開していくことで、社会性と説得力が増します。

では、どのように調査データを活用していけばいいのでしょうか。プレスリリース以外のコミュニケーションへの展開例を紹介します。

事例:ハウス食品「シチューとごはん、わける?かける?」

ハウス食品は、クリームシチューを食べる10~60代の男女を対象に、クリームシチューをごはんと分けて食べる「わける派」か、ごはんにかけて食べる「かける派」か、クリームシチューの「わけかけ論争」について全国調査を行い、ごはんと「わける派」68.0%、「かける派」32.0%という結果となりました。(2023年9月プレスリリースより)

(プレスリリースでの発信以外にも)
結果をふまえ「シチューとごはん わける?かける?」Webムービーとして、夫婦、地域、世代、それぞれのすれ違いを、調査結果をもとに再現した全3編のショートームービーを制作し公開しました。(PRX Studio Q 事例サイト参照)

事例:ツムラ「#OneMoreChoice プロジェクト」

20代〜50代の女性10,000人を対象に不調なのに我慢して家事や仕事を行う「隠れ我慢」の実態調査を行いました。その結果、女性の約8割が「隠れ我慢」をしていることがわかりました。(2021年3月プレスリリースより)

(プレスリリースでの発信以外にも)
そうした我慢を「隠れ我慢」と名付け問題提起するとともに、我慢に代わる選択肢をとれる社会をつくっていくためのプロジェクトをスタート。国際女性デーに新聞広告、Webムービー、インフルエンサータイアップなどキャンペーンを展開しました。(PRX Studio Q 事例サイト参照)

事例:バンダイ ガシャポン「これの名前は?」

「バンダイのカプセルトイ」名称について、全国 4700 人(各都道府県 100 人)を対象に知名度調査を行いまし た。その結果、正式名称である「ガシャポン」の知名度は全国平均で 4%と、長年、業界シェア 1 位(※トイジャーナル調べ) としてカプセルトイ市場をリードしてきたにもかかわらず、「ガシャポン」という正式名称があまり認知されていないことが判明しました。(2022年3月プレスリリースより)

(プレスリリースでの発信以外にも)
知名度が低い事実を公表するとともに、「これの名前は?」と問いかける新聞広告や“遊べる屋外広告”などを展開。これに対する答えとして、スローガン「答えはガシャポンだ」を開発。問いかけへの答えというだけではなく、周年イヤーを通じて、世の中にガシャポンを通じてワクワクする答えを提案していくキーメッセージとしました。(PRX Studio Q 事例サイト参照)

調査データの広がりは社会性と納得感を増幅させる

調査PRのアウトプット方法として、具体的なプレスリリースの作成方法と、プレスリリース以外の発信方法について紹介しました。

プレスリリースの発信が最適な場合もありますが、それに限らず、調査内容をボディーコピーとした広告や、内容を反映した動画、特設サイトなどさまざまなコミュニケ―ションに展開できれば、その分生活者との接点が増え、より多くの人に情報を届けることができます。

何か新しいものを制作するコストやリソースがない場合でも、自社のソーシャルメディアアカウントやオウンドメディア、社内広報など、既存のメディアで展開できる場がないか社内の発信場所を棚卸ししてみることもオススメです。


「PRX Studio Q」は、PRエージェンシーのプランニング専門チームです。コミュニケーション設計やプランニング・制作・PR思考のセミナーやワークショップなど、もし興味をお持ちでしたらお気軽にご相談ください。

prx-q@group.dentsuprc.co.jp


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