見出し画像

自転車ユーザーのヘルメット着用率を上げるには?|ブレストのコツ

企画を考えるとき、そのテーマに関するアイデアの種を探すため、まずは「ブレスト(ブレーンストーミング)」で自由に意見やアイデアを出し合う、ということがよくありますよね。

一方で、
「急にブレストに呼ばれたけど、どうしよう…!」
「自由にアイデアを出してって言われても、思いつかない…」
と緊張してしまったり、悩んでしまったりする方もいるのではないでしょうか。

そんなときのヒントを考えるため、一つのテーマを設定し60分間のブレストを行いました。
テーマは、「自転車ユーザーのヘルメット着用率を上げるために、企業ができること」。

参加したのは、PRXStudioQのメンバー4人。それぞれがどんなことを意識しながらアイデアを出しているのか、ポイントを踏まえながら実況してみました。


参加者紹介

今回のブレスト参加―メンバはこちらです。

STEP0:前提知識の整理

ブレストの前に、「自転車のヘルメット着用」について、下記のような現状を参加メンバーで確認しました。

■2023年4月1日の改正道路交通法の施行により、全ての自転車ユーザーのヘルメット着用が努力義務化。

■警察庁のデータ(※1)によると、ヘルメットを着用していないと、自転車事故の致死率が約2.1倍に増加。

■改正道交法では、自転車ユーザーにヘルメットの着用を求め、保護者は子どもにヘルメットを着用させることが努力義務化。

■一方で、施行後の2023年7月時点の同庁の調査(※2)では、ヘルメットの着用率は全国平均で13.5%。一部の地域では高い傾向にありますが、全体的にはいまだ低い傾向にあるのが現状。

※1:https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/andzen/toubuhogo.html
※2:https://www.npa.go.jp/news/release/2023/kouhousiryou.pdf

ここまでで、5分経過!

STEP1:仮説を立てる:着用を妨げるハードルとは?

初めに、「なぜ着用しないのだろう?」という問いが立てられました。
着用率を上げる方法を考えるためにはまず、着用を妨げている理由/イシュー/ハードルを明らかにする必要があります。

(イシューの設定のコツはこちら↓)

■自分や身近な問題で考えてみる

まずは、「自分だったらこう思う」という意見を出したり、身近な人の気持ちになり切って考えてみたりします。

橋本:「単純にかぶるのが面倒‥」

小川:「ヘルメットにお金を出したくないのでは?」

山崎:「髪形が崩れるのも嫌…」

鶴岡:「そもそもかぶるのがつまらない、楽しくないというのもあるかも」

■できるだけたくさんの「視点」を入れてみる

さらに、自分とは違う属性や立場の人の視点でも考えてみると、切り口が広がります。

小川:「かぶりたいけどかぶれない人っていうのもいるかな?」

橋本:「たしかに、障害があって被れない人もいるかも…」

鶴岡:「頭が大きめの人用とか小さめの人用とか、かぶる人によって細かいサイズや形が選べるといいよね」

山崎:「子連れでスーパーに買い物に行くときとか、買い物袋を片手に持っていたり、子どもと手をつないでいたりすると、手がふさがってヘルメットを持てないよね」

橋本:「レンタル充電器のように、必要なときだけ借りられて、返せるようなものがあればいいけど…」

小川:「レンタルがあっても、人がかぶったものをかぶるのは嫌という人っていうのもいそう」

■ソーシャルメディアや調査データからヒントをもらう

出てきた意見やアイデアを裏付けるデータや、新たな視点につながりそうな情報を収集すると、ヒントをもらえることがあります。

(情報収集のヒントはこちら↓)

橋本:「ヘルメット着用に関する調査データを調べてみると、近所の買い物など『近距離ではヘルメットを着用するつもりはない』と回答した人が多いみたい」

山崎:「長距離ならまだしも、ちょっとそこまで…という距離なら事故に遭わないだろうという意識はありそう」

できるだけ多くの観点から仮説を出したら、そういった考えや意見が実際に存在するのか、ソーシャルメディアの声から分析したり、簡易調査を実施したりして確かめるのも手です。

ここまでで、20分が経過!

STEP2:イシューの解像度を上げ、名前をつける

ヘルメットの着用を妨げていると考えられるさまざまなイシューが出てきましたが、これらをもう少し掘り下げ、解像度を上げていきます。
ここで意識したいのが「そもそも」という思考。「そもそも」という言葉を用いて、物事の前提に立ち戻り、イシューの原因を深掘りしてみることも大切です。

また、同じ「着用が面倒くさいから」という理由でも、持ち歩くのが面倒くさいのか、着脱することで髪形などを直さなくてはいけないことが面倒くさいのか、より具体的に考えると意見が出しやすく、ユニークなアイデアにつながりやすくなります

❶「そもそも、ヘルメットにお金を出したくないのでは?」

小川:「『努力義務』って言葉、捉え方が難しいよね」

鶴岡:「努力目標なら、わざわざお金を出して守ろうと思えない人もいるかも」

山崎:「自治体で購入費を補助しているところもあるよね」

→命名:「あくまで努力義務なら、ヘルメットにお金を使いたくない問題」

❷「そもそも、かぶるのがつまらない、楽しくないというのもあるかも」

鶴岡:「ヘルメットってスポーツ用のもの以外、あまりバリエーションがないイメージがあるよね」

山崎:「検索してみると、子ども用は動物やキャラクターのモチーフなどいろいろなデザインがあってかわいい!被ること自体が楽しくなるといいな」

橋本:「大人用だとぐっと選択肢が減りますね。そもそもスポーツなどで着用する以外はそこまでこだわるものではない、というイメ―ジもあるかも?」

命名:「ヘルメットにバリエーションがなく、着用するのがつまらない問題」

❸「そもそも、髪形が崩れるのも嫌…」

山崎:「せっかく朝セットしたのに、ヘルメットをかぶると前髪がつぶれてしまうのは致命的では…」

小川:「通勤や通学で毎日自転車を使っている人にとっては特に死活問題だよね」

鶴岡:「逆に、風よけになってヘルメットをかぶったほうが崩れない、みたいな考え方もあったりして?」

命名:せっかくセットした髪形がつぶれてしまうなら、着用したくない問題」

ここで、30分経過!

STEP3:アイデアを出す:どうやったら解決できる?

ここからは後半戦。名付けたイシューに対して、どんなアプローチができるか、アイデアを出していきます。実現性はいったん度外視して、自由に意見を出すことで、アイデアの幅を広げていきます。
今回のブレストの中で出たものから、幾つかを抜粋します。

アイデア出しのヒントは、こちらでも!↓

イシュー:あくまで努力義務なら、ヘルメットにお金を使いたくない問題

小川:「無料で配布できるのが一番だけど、財源をどこから持ってくる?」

鶴岡:「野球のヘルメットやサッカーのユニフォームにスポンサーの広告スペースがあるように、自転車ユーザーのヘルメットに広告を出せる「アドメット」をつくるのは?」

山崎:「企業にとっても、サポートしている意思表示になってよさそう!」

小川:「そこに広告を出していないと、『出遅れている』と思ってもらうのも大事だね」

イシュー:ヘルメットにバリエーションがなく、着用するのがつまらない問題

鶴岡:「例えばどこかの学校で『ヘルメット選手権』を実施するのはどう?思い思いの工夫を凝らしたヘルメットをずらっと並べて投票するなど、かぶることが楽しくなる機会がつくれるといいと思う」

橋本:「つい参加したくなっちゃいそう!」

小川:「アバターをつくる感覚に近い感じで、ヘルメットを自己表現の一つにできるようになったらいいかも」

イシュー:せっかくセットした髪形がつぶれてしまうから、着用したくない問題

鶴岡:「動画サイトなどで『絶対にくずれない前髪の作り方』とかよく見られているよね」

山崎:「美容師さんやヘアスプレーのメーカーに、ヘルメットでも絶対崩れない方法を教えてもらうのはどう?」

小川:「髪形が特徴的な、いわば、“絶対髪形を崩してはいけない”著名人やタレント、キャラクターとコラボすると、関心を持つ人の間口も広がりそう」

ここで45分が経過!残り15分!

STEP4:コラボ先や展開の仕方など、アイデアを広げる

連携できる相手や展開先がないか、アイデアをさらに広げてみます。

〔案①〕ヘルメット選手権 × アニメ/キャラクターコンテンツコラボ

鶴岡:「ヘルメットのデザインが自由になると、ヘルメット絵師が出てきたりして…!」

橋本:「アニメコンテンツとコラボもできそう!」

山崎:「配達員さんが、それぞれ自社を象徴するキャラクターのヘルメットをかぶってたり、それを一人一人アレンジしてたりしても、かわいいし応援したくなる!見かけたらソーシャルメディアでシェアしたくなりそう

〔案②〕アドメット × 地域

小川:「車で特定の道を走ると音が聞こえる『メロディーライン』みたいに、ヘルメットに埋め込んだデバイスで特定の場所を通ると何か楽しいことが起きる、という仕掛けを作るのもありかも?その地域のPRにもつながりそう

鶴岡:「神社のちょうちんみたいに、地元の個人店を応援できるアドメットをつくって、自転車ユーザーが広告塔になるという手もあるかも。ヘルメットをメディア化してしまう

〔案③〕身近なアイコンに、ヘルメットをかぶせていく

小川:「まずはもっと身近なところで、ヘルメットをかぶるきっかけになるようなものがあるといいかも」

山崎:「『バービー』に出てくるケンとか、いつも自転車に乗っているキャラがいつのまにかみんなヘルメットをかぶってたら、あれ?って気付きになるかも

橋本:「自転車にまつわる映画の名シーンで、それぞれヘルメットをかぶっているバージョンが公開されるとか」

鶴岡:「もしこのシーンでヘルメットをかぶっていたら…とか、ヘルメットをかぶっていたら人生変わってたかも…というアナザーストーリーを制作して啓発するのもありかも?」

小川:「街中のピクトグラムや、無料のストックフォトのライダーに片っ端からヘルメットをかぶせるのも、『何これ?』と気付きになりそう」 

ここで、60分が終了!

アイデア出しのポイント

今回参加したメンバーに、ブレストで意識したことを聞きました。

■素朴な疑問や「そもそも論」から発想を広げてみる

小川:「ふわっとしたことでも、とりあえず言ってみるのは結構大事」

鶴岡:「『努力義務ってそもそもわかりづらくない?』といった素朴な疑問や『そもそも論』から発想が広がることがありますよね」

■ブレストの目的やメンバーによって使い分けてみる

小川:「参加メンバーの特性によって、自分がアイデアを出す役割になるか、人の意見を広げる役割になるか考えるときもあります」

鶴岡:「アイデアを広げるブレストか、絞るブレストかによってもスタンスは違うかも」

■自分の得意な分野、好きなことの担当に徹してみる

山崎:「大人数が参加することの多いブレストでは、“他人の土俵で戦わないこと”も意識してます。それぞれの得意分野の知識を生かすことで、アイデアの幅も広がります」

■出てきた意見や考えを裏付けるデータを収集し、アシストする

橋本:「自分でアイデアを出すこともあるけど、他の人が出したアイデアを裏付けられるデータや調査結果がないか探して、判断材料にしてもらうこともあります」

■みんなが考えつくことは、先につぶしておく

小川:「ブレストの最初の5分くらいで、みんながまず最初に思いつくようなアイデアをばーっと出してつぶしておくのも大切だと思います。そうすると、残りの時間をアイデアをより深掘りしたり、広げたりすることに使えます」

オンラインでは、同時編集シートも便利!

今回のブレストでは、メンバー同士でオンラインで同時編集できるシートに書き込む形で、ブレストを進めました。オンラインではもちろん、対面で行うブレストでも、これまで出てきたアイデアを記録して、見ながら進めることができるので便利です。

今回は、ブレストでの「アイデアの広げ方」についてご紹介しました。
アイデアを広げる機会なのか、何か一つの答えを出す機会なのかなど、ブレストの目的によってもポイントは変わってきます。

一方、今回の“広げる”ブレストの際には、必ずしも、ユニークなアイデアを出し続けなければいけないわけではありません。「そもそも」な疑問を考えてみたり、人が出したアイデアを裏付けるデータがないか探したり、さまざまな視点を投げ掛けることも大切です。


「PRX Studio Q」は、PRエージェンシーのプランニング専門チームです。コミュニケーション設計やプランニング・制作・PR思考のセミナーやワークショップなど、もし興味をお持ちでしたらお気軽にご相談ください。

prx-q@group.dentsuprc.co.jp


この記事が参加している募集

やってみた

マーケティングの仕事

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!