SNSで「独り歩き」する組織の評判をマネジメントするには?
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SNSで「独り歩き」する組織の評判をマネジメントするには?

PRX Studio Q

 組織や企業がサステナブルに成長していくためには、第三者からの「レピュテーション(評価)」を把握し、マネジメント(管理)することが必要ですが、情報流通の構造が複雑化した今日、それは簡単なことではありません。生活者一人一人のイメージや印象が、ソーシャルメディアで次々と拡散され“独り歩き”してしまう時代に、”第三者にいかに語られるか”という「PR視点」がレピュテーションマネジメントにも非常に有効です。

「株主資本主義」から「ステークホルダー資本主義」へ

 こんにちは、PRX Studio QのPRリサーチャーの生井です。普段は、企業やブランドの報道状況分析やソーシャルリスニングなどの調査分析を幅広く担当しています。

 突然ですが、皆さんは「レピュテーションマネジメント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?直訳すれば「評判の管理」という意味ですが、企業やブランドの評判を上げるための戦略的な取り組みを指し、近年、企業や組織の規模を問わず注目される概念になりました。

 注目されるようになった背景の一つには、ステークホルダーが多様化したことが挙げられます。

 これまで経営者にとって、自社や株主の利益の最大化が何よりの使命だとする考え方が一般的でした。しかし最近では、持続可能な社会を目指すという世界的な合意の下、環境や人権に配慮していなかったり、自社の利益ばかりを追求したりする企業は評価しないという生活者が増加しました。このため、企業やブランド側も経済的な利害関係者だけでなく、消費者以外の生活者や地域住民、行政機関など、社会全体のあらゆるステークホルダーに貢献する姿勢を見せることがさらに必要となってきています。

 この「株主資本主義」から「ステークホルダー資本主義」へと世の中が変化した結果、評判を把握しなければいけない対象もより複雑化し、企業の経営を行う上で、レピュテーションマネジメントの重要性がより一層高まっています。

マスメディアの評価≠生活者の評価

 多様化したのはステークホルダーだけではありません。評判を媒介する「メディア」もより複雑になりました。

 かつては、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌のマスメディアを通して企業情報を得る生活者が多かったため、マスメディア上での評価が、社会の評価に直結していました。しかし、ウェブメディアやソーシャルメディアの台頭で、マスメディアの影響力は相対的に低下した代わりに、個人から個人へ評判が“共有”され“拡散”する時代へと変化しています。

 過去にあった事例として、自社のサステナビリティに関するビジョンを発信したメーカーA社が、マスメディアからは高く評価されたにもかかわらず、ソーシャルメディアやネットの掲示板では、サステナビリティビジョンとは直接関係のない過去の不祥事を指摘する声が噴出。A社に対して「信用できない」と厳しい意見があふれ、マスメディアの報道と生活者の評価が大きく異なる結果となりました。このように、情報流通の構造が複雑になったことで、メディアの評価が必ずしも生活者の評価と一致するわけではなくなったので注意が必要です。

潜在から顕在へ、拡散されるレピュテーション

 では、複雑化するレピュテーションを捉えるにはどうしたらよいのでしょうか。

 PRX Studio Qでは、より正確に把握しマネジメントするために、レピュテーションが形成される時間軸に沿って、「潜在レピュテーション」と「顕在レピュテーション」の二つに分類しています。

 「潜在レピュテーション」とは、企業に関する情報を受け取った生活者がまず抱くイメージや印象で、一人一人の心の中にとどまった状態なので「潜在」と呼んでいます。生活者へのヒアリングなどを行う一般的なレピュテーション調査で対象とするのはこの部分です。

 一方、「顕在レピュテーション」とは、生活者が抱いたイメージや印象が、ソーシャルメディアなどに投稿されることで可視化された状態で、潜在的だった評判が情報として表出した段階を指します。誰でもソーシャルメディアで自発的に発信したり、他者の発信を見聞きしたりできるようになった時代、現実の日常生活では言葉にできない企業やブランドへの鬱憤も、ソーシャルメディア上なら投稿する、という人も少なくありません。

 先ほどのメーカーA社の例で言えば、「過去と現在のA社の発言は矛盾していて信用できない」と感じた一人の生活者の「潜在レピュテーション」は、ソーシャルメディアに投稿されることで「顕在レピュテーション」となり、これまでA社に好意的な印象を抱いていた別の生活者にも拡散されていきます。このレピュテーションは果てしなく広がるソーシャルメディア上で「独り歩き」していくため、一度顕在化するとリカバリーが困難です。

 だからこそ、「顕在」化のリスクを最低限にするためには、「潜在」時点で形成される印象に留意した活動が必要です。潜在時にそもそも間違った印象を与えないこと、間違った印象を正していくことがレピュテーションマネジメントにとっては重要だといえるでしょう。もしくは、顕在レピュテーションから気付きを得て、そもそものメッセージに正当性があるか、時代とともにアップデートする必要はないか、柔軟性をもってメッセージ自体を見直すことも重要です。

レピュテーションマネジメントにPR視点を

 共有され拡散していくレピュテーションを管理するためには、情報の独り歩きを見越した文脈づくりや発信の仕方が必要で、PRが力を発揮する場面です。なぜなら、PRとは自らの組織が伝えたいことを世の中に「語られる」ことを目的にしているからです。

 PRとは何か説明をする際、広告との対比を用いることが多々ありますが、組織の伝えたいことを自ら「語る」のが広告だとすると、PRは第三者に「語られる」ことです。例えば、マスメディアのニュースで取り上げられることや、ソーシャルメディアで「バズる」ことなど、恣意的にコントロールできない第三者の言葉だからこそ、説得力が増し、レピュテーションの向上につながるのです。もちろん、情報の発信の仕方以前に、そもそものメッセージの正当性をしっかり担保することが不可欠ですので、その事前チェックは欠かせません。

 PRプランナーは、生活者が思わず「いいね!」を押したくなるような社会課題への取り組みやムーブメントは何か、その企業やブランドの「社会との接着面」をまずは見つけます。そして、複雑化したメディア構造の中で、組織のポジティブな情報が正確に生活者まで届くよう発信の仕方を設計します。つまり、レピュテーションが上がるような情報の「独り歩き」を戦略的につくり上げるノウハウをPRプランナーは持っているのです。

 だからこそ近年は、企業や組織の経営にとってもPRという概念が非常に重要な役割を果たし、世の中に「語られる」ためのPR視点が経営者にも求められるようになりました。PRは、広報や一部の部署の担当者に限らず、レピュテーション向上を目指す全ての皆さんに役立ちます。潜在から顕在へと変化するレピュテーションをマネジメントするために、「PR視点」をぜひ意識してみてください。



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