企業ショート動画で見たいのは「たのしめる」VS「ためになる」どっち?
「企業のショート動画(※1)」と聞くと、どんなイメージが湧きますか?
商品やサービスの紹介、専門テーマの解説、ノウハウ公開、社長や社員のダンス動画など、さまざまな印象があると思います。コンテンツの幅も広がる中、企業ショート動画を制作する立場になったら、どんな内容なら見てもらえるのか迷う方もいるのではないでしょうか。
こんにちは、PRコンサルタント/ビデオグラファーの関です。自分自身でも映像制作をする傍ら、企業/ブランドが運用するショート動画の戦略立案や制作をサポートしています。前回の記事(下記リンクより)では、続けやすいショート動画コンテンツ制作のポイントを紹介しました。
今回は、私たちのチーム「PRX Studio Q」で行った、企業ショート動画についての調査結果を踏まえながら、生活者が実際にどんな内容を好んで視聴しているのか、視聴によって行動や意識にどんな変化が起こっているのか、分析しました。
約8割が「見たことがある」、身近な存在
まず、「企業ショート動画」は、どんな人がどれくらい見ているのでしょうか。次のグラフをご覧ください。
週に1回以上縦型ショート動画を見る人のうち、「企業ショート動画」を一度でも見たことがあると答えたのは約8割で、3人に1人が「よく見る」と回答しています。
さらに、企業の公式アカウントをフォローしたことがある人は約6割と、半数以上がアカウントのフォロー経験があり、「企業ショート動画」が身近な存在であることがわかります。
また、「よく見る」と回答した人の合計は、20代が最も多く約43%、次いで10代が約39%、30代が約32%、40代が約29%で、若年層はよく見ている人が多く、40代でも3人に1人がよく見ていると答えています。
次に、「企業ショート動画」を視聴したことで、生活者の意識や行動にどんな変化があったのかを見ていきます。
「企業ショート動画」を見たことがある人のうち、視聴がきっかけで「企業やブランドに興味を持った」が約45%、「企業やブランドへの理解が深まった」が約30%、「企業やブランドへの好感が増した」が約24%と、企業やブランドの認知獲得だけでなく、企業理解や好感度への効果もうかがえます。
企業ショート動画の影響を幅広く受ける30代
さらに深掘りしていくと、年代によって、企業ショート動画の活用方法や影響の受け方に違いがあることもわかってきました。
年代別に見ると、30代は特に、「企業ショート動画」からさまざまな観点で影響を受けていることがわかります。
企業理念に共感したり、好感を持ったりと、ポジティブな変化のきっかけになっていることは他の年代と変わりませんが、「企業やブランドへの好感が減った」「就職・転職先の候補から外れた」など、ネガティブな変化のきっかけにもなっている割合が、他の年代より多いことが特徴です。
さらに、視聴をきっかけに「その企業に投資を考えた」と回答した人も30代が最も多く、他の年代よりもさまざまな場面で、企業ショート動画を判断材料にしていることがわかります。
また、企業ショート動画を見て「就職・転職先の候補になった」と回答した人は20代が顕著に多い結果に。大学生や第二新卒などを含む20代では、就職活動の情報収集にも、企業ショート動画が活用されていることが考察できます。
「たのしめる」VS「ためになる」
生活者にとってさまざまな判断材料になっている「企業ショート動画」ですが、実際にどんなコンテンツだと魅力を感じて、見てもらいやすくなるのでしょうか。
今回はコンテンツを大きく「たのしめる」と「ためになる」の2種類に分け、どちらに魅力を感じるのか調査しました。
結果を見ると、企業ならではの「ためになる」発信に魅力を感じる生活者が多いことがわかりました。
ただし、エンタメ要素のあるコンテンツに魅力を感じないということではありません。トレンドをつかむことももちろん重要ですし、企業/ブランドによっては、エンタメ要素のあるコンテンツが最適である場合もあります。
実際に、年代別で見ると、20~40代と比べて、10代はエンタメ要素の多いコンテンツを求める割合が他の年代より高くなっています。
重要なのは、そのコンテンツがその企業/ブランドならではの文脈で、ターゲットにとって価値のある情報を生み出しているかどうかです。
さらに、「ためになる」コンテンツの中でも、どんなところに魅力を感じるのかを見ていきます。
全体平均で見ると、「新製品やキャンペーンの情報がわかる」がトップで4割弱、「商品やサービスの詳細(使い方や料金など)がわかる」が約3割と、商品やサービスなど、消費の観点での情報収集としてショート動画を活用している人が多く見られました。
一方、「ほかでは見られないこだわり(開発秘話や裏話など)」「その企業だけが知っている情報(商品の活用法や裏技など)」がわかることにも、3割弱が魅力を感じていました。消費に留まらず、こだわりや開発秘話など、より企業/ブランドの内側を知りたいという声もありました。
10代は「人」、30代は「現場」と「思想」
さらに、年代によって、コンテンツに求めるポイントが少しずつ違うこともわかりました。
■10代は「人」
社員や経営陣の出演など、企業の「人」に魅力を感じることが多く、これは、企業をまだ身近に感じづらい10代にとって、「中の人」を見ることでより親近感が得られるからだと考えられます。前述の通り、他の年代よりエンタメ要素を求める傾向があるので、社員や社長が出演するエンタメコンテンツは好まれやすいと考察できます。
■20代は広いアンテナ
突出して高い割合のものが無く、商品やサービスなど「モノ」への関心も高い一方、「人」や「理念」「こだわり」などへの関心も比較的高い傾向です。視野を広く、さまざまな情報にまんべんなくアンテナを張る傾向にあるようです。10代と比べると、社会や企業との接点が多くなっていると考えられます。
■30代は「現場」と「思想」
「モノ」への関心も高い一方で、オフィスや工場など、事業の「現場」が見られることや、企業理念やパーパスなど、企業の「思想」の部分にも特に魅力を感じています。10~20代と比べて、日常生活の中で企業との接点が多く、その存在意義や社会的価値などを注視する傾向が見られます。
■40代は「モノ」
商品やサービスの詳細や活用法、開発のこだわりなど、企業が提供する「モノ」への関心が高いのが40代の特徴です。他の年代と比べて金銭的な余裕がある年代でもあり、消費の観点が強く見られます。30代以下と比較すると、マスメディアから情報収集をしている割合も多いと考えられ、目的別でメディアを使い分けているケースもあるかもしれません。
これらの結果はあくまで一例ではありますが、こうした年代での違いも踏まえ、企業/ブランドならではの文脈を意識しながら、ターゲットに合わせてコンテンツを使い分けることもオススメです。
企業/ブランドにかかせない情報発信ツールに
企業/ブランドのPR担当者の中でも、ショート動画=エンタメというイメージが強いと、広報活動などに取り入れるにはハードルが高い…と感じる方は多いかもしれません。
しかし、ショート動画はいま、エンタメツールから、もはや情報収集には欠かせないインフラツールとなっています。今回の調査でも、企業/ブランドが提供する商品やサービスなど消費観点だけでなく、求職や投資の判断材料の1つにまでなっていることが分かりました。
さらに、生活者が企業ショート動画に求める情報はさまざまで、特に「その企業/ブランドならではの役立つ情報」が重視されています。
社内では当たり前だと思っていた、社内の人、商品やサービスに関する裏技やコツ、開発秘話など、社内の情報を一度棚卸ししてみると、思わぬ発信材料が見つかることもあります。
今後ますます、企業/ブランドの情報発信のツールとして、「ショート動画」は欠かせないものになっていくでしょう。
PRX Studio Q (電通PRコンサルティング)では、企業やブランドのPR戦略立案から企画、実行までをワンストップで対応いたします。ショート動画の制作/運用のコンサルティング、PRスキルアップセミナー、アイデア発想ワークショップなども行っています。ご要望に合わせて柔軟に対応いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。