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"リアル×デジタル"を組み合わせた、CXプロモーション9つの型

広報・PR担当者は、商品やサービスのプロモーションを考える機会が多々あります。しかし、現在の市場では商品・サービス自体の差別化が難しく、コモディティ化が進んでいます。こうした中で、機能や価格といった「機能的価値」だけでなく、顧客が購入や利用に至るまでの「情緒的価値」、すなわち体験の質が重要視されています。

マーケティングの世界では、顧客が体験する全てのプロセスをデザインすることが「CX」(カスタマー・エクスペリエンス=顧客体験)として定着しつつあります。

特にプロモーションにおいては、デジタルを活用した体験設計が欠かせません。近年では、オンラインとオフラインが融合した手法も増え、リアルとデジタルを組み合わせた体験設計が求められています。


こんにちは。PRプランナーの齊藤です。

今回は、リアルとデジタルが融合したCXプロモーションを9つの型として、それぞれ特徴を見ていきます。


●CXソリューション9つの型

プロモーション分野の技術進化は非常に速く、手法も多岐にわたります。数年も経つと、以前の手法が古く感じられたり、目新しさが薄れてしまうこともしばしばあります。

そこで今回は、最新のプロモーション事例を基に、一般的なCXソリューションを9つに分類し、その型を分析しました。

CXソリューション9つの型

①ストア集客型

ストアに「デジタルギミック」を導入することで、リアルとデジタルが融合した体験を提供する設計が増えています。
従来の売り場では、企業と生活者の接点は主に商品の売買に限られていましたが、デジタル要素を加えることで、売り場自体が新たなコミュニケーションの場へと変化しています。これにより、顧客との接点が強化され、集客効果やブランド・商品の認知向上、理解促進が一層進められています。

■事例:物流会社
誰かに想いを伝えたくなる、ギフトを贈りたくなる店舗を目指し、「選ぶ・包む・贈る」までの一連の流れをスムーズに楽しめる体験型店舗を開業。
AIを活用したプレゼント選びから、個性豊かでオリジナリティに富んだラッピング、想いが相手に伝わるようなイメージをデジタルインタラクションを活用したギミックで可視化し「プレゼントを贈る体験」を、設計しています。

②ポップアップ発信型

デジタルでの体験を現実世界に落とし込んだ「体験型ポップアップ」は、特別な体験価値を創出する手法です。オンラインでよく見る・利用するサービスを、リアルな場で直接体験できるようにすることで、没入感のあるイマーシブな体験を実現。「誰かに話したくなる体験」を提供し、話題化を狙うのがポイントです。

■事例:フリマサービス
フリマサービス上で実際に購入できるアイテムだけで作った没入型ポップアップ施設を、期間限定でオープン。レトロなテーマに合ったアイテムで作られた空間と、役者が常駐することで、懐かしさがイマーシブに再現され、あまりのリアルさに、「タイムスリップしたみたい!」とSNSで話題になりました。

③サンプリング話題型

従来のように不特定多数の通行人に、新商品を配布するだけのサンプリング手法ではなく、ターゲットを絞り、デジタルコンテンツを掛け合わせによってユニークな体験を設計します。ユーザーのロイヤリティを高める狙いです。

■事例:飲料メーカー
オフィスワーカー向けに全国主要都市のターミナル駅構内にて商品サンプリングを実施。体験者の表情をAIで解析するデジタルコンテンツを設置し、体験者の心身の状態を診断することで、ストレスレベルや熱中症リスクの自分事化を促し、適切な水分補給を促す体験設計を企画しました。

④屋外広告 体験型

生活者が単に情報を受け取るだけでなく、能動的に行動を起こす屋外広告の手法です。視覚的に「面白い」「写真を撮ってSNSでシェアしたい」と感じさせるだけでなく、実際に触れたり、デジタルギミックを体験できる要素を取り入れることで、双方向のコミュニケーションを生み出します。ソーシャルメディアに能動的にシェアされることで、より多くの人に情報が伝わっていきます。

■事例:電機メーカー
音声機器のブランドが、懐かしい音楽と忘れられない風景の記憶を再生する企画を実施。思い出の風景と音楽のエピソードをSNSを通じて生活者から募集し、オリジナルプレイリストを作成。スマホをかざすと、そのプレイリストが再生できるアイテムを制作し、ピールオフ型のポスター広告として掲示、配布しました。

⑤プロモーション話題型

ソーシャルメディア上での発信を促し、話題を広げることで情報を拡散する手法です。最新のデジタルテクノロジーを活用し、参加型のデジタルコンテンツを組み込んだプロモーションも増えています。生活者に「思わず誰かにシェアしたくなる」気持ちをかき立て、巧みにSNS投稿を促す事例が数多く見られます。

■事例:通信キャリア
歌声合成技術と声質変換技術を組み合わせ、ユーザーが考えたあるあるを、タレントが歌っているかのような動画生成コンテンツをつくれるサービスを開発。ショート動画配信サービスでの投稿キャンペーンや動画インフルエンサーとのタイアップも行い、ショート動画やSNS投稿を誘発し、話題化に成功しました。

⑥ファンコミュニティ参加型

これまでもファンコミュニティ活用はありましたが、最近では、コロナ禍で培われたオンラインコミュニティ構築のノウハウと、定期的にリアルなコミュニケーションの場の提供を組み合わせることで、オンライン・オフラインを越境する手法が見られます。企業と生活者のつながりがより強固になり、ファンの熱意を高めることで、ロイヤリティの高い体験価値を創出しています。

■事例:自動車メーカー
同じ学校に通う同級生のように楽しく交流を深める場として、ユーザーが自社の自動車との思い出を投稿し共有することができるオンラインコミュニティを開設。キャンプやアウトドア、モータースポーツなどの趣味ごとのテーマで交流できる場や、ブランドの「安全思想」を裏付ける体験談をユーザー同士で共有することができる場などの人気コーナーがあります。課外授業として、オフラインイベントも定期開催しています。

⑦UGC発話型

企業の公式SNSやインフルエンサーによるタイアップ投稿だけでなく、ユーザーにリッチな体験をしてもらうことで、「UGC」(User Generated Content=ユーザー生成コンテンツ)を生む手法です。

■事例:食品メーカー
ロングセラーブランドの菓子の販促キャンペーンの一環として、ポップアップ型のゲームセンターをオープン。ブランドをテーマにした、人気ゲームとコラボするなど豊富な体験コンテンツを開発し、リアルでもオンラインでもゲームを体験できる設計にすることで、多くのUGCを生みました。

⑧XR体験型

近年の技術進化に伴い、XR(※)を活用した体験型コンテンツが急増しました。
特に、店舗やイベントを起点に音声を活用したXRコンテンツが新たな潮流となっています。音声を活用することで、ユーザーに対してより深く語りかけ、ロイヤリティ向上を狙うことができます。

※XR(クロスリアリティー)
現実世界と仮想世界を融合し、新しい体験を創造する技術で、「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」などの先端技術の包括的な総称です。

■事例:外食チェーン
人気の深夜ラジオ番組とコラボレーションし、TVCMを企画。CM放映に合わせて、限定ラジオコンテンツを夜時間帯の店内にて放送。また商品パッケージを活用してテイクアウトでも限定ラジオコンテンツが聴ける体験を設計しました。店内飲食もテイクアウトも多い、外食チェーンならではの、二刀流設計となりました。

⑨メタバース参加型

「パラレルワールド(仮想世界)」と「リアル(現実世界)」を融合させた「パラリアル」という言葉が生まれています。バーチャル世界での没入感と、リアルな特別体験を組み合わせたハイブリッド型のイベントは、世界中のユーザーの関心や参加を集め、人気を博しています。

■事例:IT企業
メタバース上にある会場で、アバターなどの3Dアイテムやリアル商品を売り買いできるバーチャルマーケットを開催。同時に世界各所のリアル会場も併催し、バーチャルとリアル双方で楽しめる「パラリアル」なイベントが行われ、世界中のファンから注目を集めています。


今回は、「リアルとデジタルが融合したCXプロモーション9つの型」についてご紹介しました。
これらのCXソリューションは単体での設計だけでなく、複数の領域を掛け合わせている事例も多く見られました。今後の企画のご参考になればうれしいです!


PRX Studio Q (電通PRコンサルティング)では、今回の記事でご紹介したCXプロモーションも、ご要望に合わせて柔軟に対応いたします。企業やブランドのPR戦略立案から企画、実行までをワンストップで対応いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。