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“非財務情報”のニュースになりやすいポイントは?PR IMPAKT®で発信のコツを解説!

 近年、企業を取り巻く環境が変化し、ESG、SDGs、人的資本をはじめとした非財務領域への注目が高まってきています。

電通PRコンサルティング内のシンクタンク「企業広報戦略研究所(C.S.I.)」が2022年に生活者1万人を対象に行った調査でも、企業に魅力を感じるポイントは、社長や社員などの「人的魅力」が最も高くなっています

中長期的に未来を見据え、企業の価値や魅力を向上させていくためには、財務情報に加え、非財務情報を含めた幅広い情報発信が大切であることが分かります

とはいえ、いざ非財務情報の発信をしようと思っても、
「数ある取り組みのどこにフォーカスして伝えていくべきか分からない」
「狙い通りのステークホルダーに届かず、他社情報に埋もれてしまう」…

ということも多いのではないでしょうか。

こんにちは、PRプランナーの岩澤です。

今回はそんな非財務領域の情報発信のコツとして、以前、私たちのnoteでご紹介した、「メディアが報道したくなるポイント」をまとめた電通グループオリジナルの「PR IMPAKT®️」というメソッドに当てはめながら、幅広いステークホルダーに届けるための考え方をご紹介します。


企業価値を支える「人」の魅力

 非財務領域の情報開示において、環境・社会への取り組みと同じく重要とされているのが人材です。

前述しましたが、C.S.I.の調査(下記グラフ)によると、生活者が企業に魅力を感じるポイントとして挙げたもので、最も多かったのは「社長を含む社員に関連する人的な魅力」です。

C.S.Iの「企業魅力度調査」

企業に目を向ける際、多くの人が業績や事業、商品・サービスだけでなく、企業の根幹をなす人材に魅力を感じていることが分かります。

多様な人材が社内で活躍することで、魅力的なアイデアを生み出し、商品やサービスの価値や競争力が高まり、その総体である企業も成長し、魅力向上へとつながっていくといえます。

一方で、せっかく魅力的な人材をはじめとした非財務領域の情報を持っていても、ステークホルダーに届かなくては意味がありません。

では、どうすれば効果的な発信ができるのでしょうか。

コミュニケーションの骨子となるP・A・K

冒頭でも触れましたが、「メディアが報道したくなるポイント」をまとめた電通グループオリジナルの「PR IMPAKT®️」というメソッド(下図)があります。

「PR IMPAKT®️」

このメソッドは、過去の膨大な報道を分析し、企業の取り組みなどがニュースになるためのポイントを6つにまとめています

非財務の観点では、この6つのポイントのうち、「Public」「Actor」「Keyword」が特に重要です。

「Public」はなぜ取り組むのか?という理由、「Actor」は誰が発信するのか?という主体、「Keyword」は目標や成果はどれくらいか?というファクトを伝えるためにそれぞれ重要なポイントです。

下記で、それぞれの視点を見ていきます。

Public・・・①社会性・公共性

前述の「PR IMPAKT®️」の記事内でも言及されているとおり、「現在、社会的に関心が高く、みんなが知るべき情報かどうか」「社会性を帯びている取り組みかどうか」という視点です。

企業が、経済的価値と社会的価値の両方を創出していくためには、特定の社会課題を設定し、自社が向き合わなければならない理由を明らかにする必要があります

この理由が曖昧であると、ステークホルダーの理解や納得が得られませんし、そこに自社らしさや意義がなければ、他社との差別化が図れず、同質化してしまいます。

〔例〕
・女性の健康を支えるサービスを提供する企業が、自社の女性社員に対しても、女性特有の不調に関する休暇制度や補助制度を整備している。
 
・家や家族に関するサービスを提供している企業が、「家での幸せ」についての課題を解決するために、社員の育休取得率の向上に取り組み、他社とも連携しながら、社会全体の育休取得率の向上を目指している。

Public・・・②地域性

Publicの2つ目の視点です。地方創生や地域活性化といった、地域における課題に取り組むことも重要なポイントです。

中長期的にどのようなインパクトを地域にもたらすことができるのか、継続した地道なアクションが求められます。
 

 〔例〕
・航空会社では、地域活性化のために、出身地などその土地にゆかりのある社員を各地域に派遣。地域資源の発掘や、魅力の発信を通して地域産業の振興を支援。関係人口の創出に取り組んでいる。

Actor・・・体現者・語り部

取り組みに対する企業の志や思いを発信するとき、「誰が語るか」で、説得力を高めることができます。

特に企業の未来や全体像を語る際、トップからの発信は効果的ですが、必ずしもトップでなければいけないということではありません。

発信する内容に最も詳しい社員や、取り組みを主体的に実施した社員など、そのときの文脈に合った人であることが重要です。

したがって、アクションの体現者でもある社員起点の発信も有効です。取り組みの現在地と行く先、アウトカムを当事者視点でリアリティーを持って発信することができます。

近年では、自社だけで複雑化する社会課題と向き合うことは困難なため、パートナーシップを築き、同志である協働パートナーと一緒に行動を起こし、共創型で情報発信していく流れも増えています

〔例〕
・暮らしに関連する企業のトップ自らが育児休業を取得し、取得経験や知見も踏まえて、スポークスパーソンとなり、柔軟で働きやすい社内環境を社内外に伝達している
・障がいのある家族を持つ社員が、自身の問題意識のもと自社に提案し、障がい者雇用に特化した取り組みを実現

Keyword・・・数字・キーワード

企業の取り組みにおいては、目標や成果を定量的に示すこともポイントです。

非財務領域は、財務領域と比べて数値で表しにくい部分もありますが、市場規模や目標、周辺情報など、できるだけ具体的な数字で示すことで、アウトカム予測や未来の見通しを示すことができます。

また、指標としての数字とは別の観点で、「創業〇〇周年」といった数字を起点に、ブランドアクションを起こしていくこともできます。

そして、世の中に伝わりやすいキーワードを設定することもポイントの一つです。

「〇〇経営」など自社独自の経営方針を一言で分かりやすい言葉に言語化し、発信していくことで、企業らしさを端的に印象づけることへとつながります。

〔例〕
・総合商社では、推進する朝型勤務の成果として、子育てのしやすさなどから急上昇した出生率を発表
・衣料品メーカーでは、自社独自の経営哲学を「〇〇経営」と名付け、書籍化などで広く発信

ストーリーを補強するI・M・T

上記のように、「Public」「Actor」「Keyword」を据えた上で、「Inverse」「Most」「Trend」の3要素で情報発信ストーリーを強化します。

Inverse・・・逆説・対立構造

 「〇〇なのに××」といったように、固定観念や従来の慣習や常識を覆す/見直すという視点です。

意外性があったり、現状に対する問題提起につながったりする内容は、情報価値が高く、ニュースになりやすい傾向があります。

〔例〕
・普段は競合関係なのに、社会課題解決という共通の目標に向かい、競合同士がタッグを組む
・自社の事業領域ではないのに、培った技術を生かして、新たな市場を開拓

Most・・・初・独自・最上級

高いニュースバリューとなり得る要素で、ファクトやエビデンスとともに自社の強みや優位性を示すことができます。

必ずしも「〇〇初」(世界初、全国初、業界初など)や「最上級」(最多、最小、〇〇すぎるなど)となりえずとも、独自性を有したデータなどを活用することで、情報価値を高めることができます。

〔例〕
・消費財メーカーでは、資源循環型社会の実現のため、他社と協働で、実現不可能と言われていたリサイクル技術を世界で初めて実現
・時計メーカーでは、毎年、その企業ならではの「生活者の時間」に関する意識や実態を探る独自調査を実施

Trend・・・時流・世相・トレンド・季節性

情報をどのタイミングで発信すると最も届きやすいか、という視点です。
発信する内容について、世の中の関心が高まりやすいタイミングを探ります。

〔例〕
・国際女性デーに合わせ、小売業が生理の貧困に対する取り組みを開始
・消費財メーカーでは、従来の「社会人らしさ」にとらわれず、自分らしさを表現できる髪形や服装で出席できる入社式を開催

このように、非財務領域の情報発信においては、「PR IMPAKT®️」でも、特にP・A・Kが重要な役割を果たします。

発信したい取り組みやブランドアクションを検討する際には、これらの要素を含んでいるか、検証してみることをおすすめします。

また、非財務領域の取り組みは短期的には成果が見えにくいため、中長期的に取り組んでいく必要があります。

世の中の変化、そして未来に目を向け、時には軌道修正しながら、じっくりと育んでいけるとよいのではないでしょうか。


今回は非財務領域の情報発信のコツについてまとめました。

PRX Studio Q (電通PRコンサルティング)では、企業やブランドのPR戦略立案から企画、実行までをワンストップで対応いたします。今回ご紹介した、非財務領域のファクトの棚卸しから、PR思考を活用したアイディエーションを行っていく協創型ワークショッププログラムも実施しています。ご要望に合わせて柔軟に対応いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。