【発想法】生活者の課題から「アイデア」を生み出す「8つのコツ」をまとめました。
生活者の課題を解決するようなブランドアクションが思いつかない…。アイデア出しが苦手で、企画が広がらない…。今回はそんなときに役立つアイデア発想のメソッドを紹介します。
こんにちは、プランナーの松尾です。
企業やブランドは、「生活者の課題=イシュー(※)」と向き合い、それを解決する施策を実行することで、社会から共感や信頼を得ています。
しかし、施策のコアとなるアイデア生み出すことは簡単ではなく、私自身、頭を抱えた経験は一度や二度ではありません。そんなとき、イシューからアイデアへ発展させるアプローチの傾向を過去事例から見ようと思ったのが、メソッド開発のきっかけです。
(イシューを見つけるためのソーシャルメディア分析については、下記のnoteにまとめています)
このメソッドは、イシューを起点にした過去のコミュニケーション事例をヒントに、アイデア発想のアプローチを8つに分類したもので、その頭文字をつなげて「CORE IDEA」と名付けました。
アイデアを考える前に「イシューを具体化」してみる
アイデアへのアプローチを考える前に、まずはイシューを具体的に整理するのがポイントです。
例えば、「マスクの熱中症」というイシューに着目した場合、より具体化して「小学生が、真夏日の通学時もマスクを着けたまま長時間歩くことで、熱中症になる危険が高い問題」のように、対象者や行為などを具体的に設定します。
そうすることで、「通学時の熱中症」という事象がどう変化し、誰の意識や行動が変わるとよいのか、考えやすくなります。
8つのアイデア発想アプローチ「CORE IDEA」
本題の、8つのアイデア発想アプローチ「CORE IDEA」を紹介します。
C Clarify(可視化する)
ズバリ、“可視化”は目に見えないものを分かりやすくすること。数字やデータで表現したり、擬人化・疑似体験させたりするアプローチです。
例えば、クラフトビール会社「ヤッホーブルーイング」は、「飲み会で、会社の上司が“先輩風”を吹かせ、会話を占有してしまう」というイシューに対し、「扇風機付きのイス」を開発。先輩風を吹かせたような言動をAIが察知し、イスに取り付けた扇風機から“本物の風”が吹く仕組みを搭載したマシンで、先輩風という見えない概念を“可視化”しました。
O Open(開放する)
オープンという言葉の通り、前例やルールなどの制限を取り払って“開放”したり、これまでブランドや企業が秘密にしていたことを“公開”したり、ノウハウを“オープンソース”にするといったアプローチです。
例えば、コロナ禍の外出自粛で「飲食店に行って人気メニューを食べたいけれど、今は外出できない」というイシューに対し、さまざまな飲食店が、家でも作れるよう「お店の秘密のレシピ」をソーシャルメディアで公開。お店のファンから好意的な反響が多く寄せられるといった事例がありました。
R Replace(置換する)
従来の方法を一部だけ“入れ替え”たり、言葉や仕組みを“組み替え”たりするアプローチです。アクションを考えていく過程で、伝わりづらい懸念がある場合、Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、How(どのように)のどこか一点を“ズラして”みると、新たな視点が生まれることがあります。
例えば、コロナ禍で生まれた「オンライン結婚式」や「オンライン帰省」なども、これまでのリアルをオンラインに“入れ替え”たアプローチのひとつといえます。
E Expand(拡張する)
訳としては“拡張”ですが、ここでは逆の“縮小”も含めて、Expandに分類します。スケールを変えるという視点で、大きさ・長さを半分にしたら、倍にしたら……と考えてみるとよいかもしれません。
例えば、花の生産・流通の業界団体でつくる「日本花き振興協議会」は、2020年の「母の日」を「母の月」へと“拡張”し、「5月の1カ月間を通じて、感謝の気持ちを伝えよう」と呼び掛けました。これは、コロナ禍で生花店の店頭が「三密」の環境になってしまうことを避け、お客様の安全、生花店で働くスタッフの安全、配送業者の混乱を避けるための取り組みでした。
I Invert(逆転する)
先述の「Replace(置換する)」と重なる部分もありますが、本来ネガティブなことをポジティブな意味へと“真逆”にしたり、立場を“逆転”させたり、これまでの慣習に“逆行”したりするアプローチです。
数年前に、海外の海洋環境保護団体が、北太平洋に浮遊する海洋ごみを「Trash Isles」(ごみ諸島)として、公式の国家として認めるよう国連に申請しました。これは「ごみ」という存在を「国」として“転換”することで、海洋ごみ問題の深刻さを気付かせる試みでした。
D Disagree(対立する)
端的にいうと“対立構造”です。それにより、立場を明確にしたり、議論や賛否が起こったり、あえて“仲たがい”することで、自社やブランドの立場やスタンスを際立たせるアプローチです。
対立構造といっても、対立する相手は競合他社だけではありません。例えば、食品メーカーが自社の商品同士で「復活させたい味」や「新しいパッケージのデザイン案」を競わせるといったアイデアも、このアプローチといえます。
E Entrust(代弁する)
ブランドや企業が意思表明し、生活者に寄り添って気持ちを“代弁”していく、強い者に“立ち向かう”、困っている人を“支援”するといったアプローチです。
例えば、新聞広告で企業がある問題に対してスタンスを表明し、それに対して生活者が賛同したり、ソーシャルメディアで議論が巻き起こったり。ここで注意したいのは、“代弁”といっても「言いっぱなし」で終わらず、企業の行動が伴っていること。代弁するだけでは解決できないイシューに対しては、実体を伴ったアクションもセットで考えるとよいでしょう。
A Align(協調する)
Allianceの動詞形がAlign。業種の異なる企業や同業種のライバル企業が、イシューを解決するために“協調”したり、“仲間”となったりするアプローチです。最近では、競合同士のコラボレーションや、業種を超えた取り組みも増えています。
例えば、コロナ禍では、休業中の飲食店の従業員をデリバリー会社が臨時雇用する“協業”の取り組みや、環境負荷を減らすパッケージをライバル企業が“共同”開発するといった動きも出てきています。
最近のPR事例で目立つアプローチは?
最近のPR事例では、8つの中でも、「Open(開放する)」「Entrust(代弁する)」「Align(協調する)」のアプローチが目立っている印象です。
この3つの視点は、大きく捉えると、分断が加速する社会において、企業やブランドが生活者に寄り添い、パートナーとして一緒に解決を目指していく取り組みともいえます。
今回、8つのアプローチを紹介しましたが、この型にはめることがゴールではありません。アイデアを生み出すには多様なアプローチがありますが、ひとつの視点として「CORE IDEA」がヒントになればうれしいです。さまざまな角度からアイデアを考えることが、課題を突破することにつながるのではないでしょうか。
今回は、アイデア発想アプローチ「CORE IDEA」についてご紹介しました。
PRX Studio Q (電通PRコンサルティング)では、企業やブランドのPR戦略立案から企画、実行までをワンストップで対応いたします。PRスキルアップセミナーやアイデア発想ワークショップなども行っています。ご要望に合わせて柔軟に対応いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。