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情報発信は「モーメント」が大事。365日のうち「いつ」が最適?

日常生活の中で、「とき(時)」を意識する場面はありますよね。ときは「タイミング」や「モーメント(瞬間)」とも呼ばれます。

例えば、バレンタインデーに、「このタイミングで好きな人に気持ちを伝えよう」とか、同僚に何か相談をするとき、「今は別のことが忙しそうだからタイミング見て、後にしよう」など。自分が何かを伝えたいときに、相手に一番伝えやすい/伝わりやすい瞬間(モーメント)はいつか?を考えて行動することは多いはずです。

他にも、春の卒業シーズンに懐かしい曲を聴きたくなったり、新年の始まりに何か新しいことにチャレンジしようと思ったりと、タイミングによって心や体が動かされやすくなるということもあります。

ニュースやTwitterトレンドを見てみても、
「今日は〇〇の日だから…」
「今月からいよいよ夏本番なので…」
「今年のクリスマスは…」
といったように、歳時やシーズンが切り口になっていることは多いです。

企業/ブランドの情報発信においても、この「モーメント」を意識すること、つまり「365日/24時間のうち、最もその情報に興味を持ってもらいやすいのはいつか?」を考えることは大切です。トレンドや時流は変化のスピードが速い上に先読みしづらいこともありますが、毎年同じタイミングで関心が高まる年間行事やトピックなどは、ある程度予測することもできます。

今回は、この「モーメント」の種類と活用方法をご紹介します。


関心が高まるポイントの一つ

メディア、そしてその先にいる生活者の関心を高めるポイントについて、過去の報道を分析して導き出した6つの視点「PR IMPAKT®」があります。

(参考)「PR IMPAKT®」について、詳しくはこちら↓

Inverse…逆説・対立構造
Most…最上級・初・独自
Public…社会性・公共性・地域性
Actor…役者・語り部・体現者
Keyword…キーワード・数字
Trend…時流・世相・トレンド・季節性

今回のテーマである「モーメント」は、この6つのうち「Trend」に当てはまります。「メディアが報道したくなる」「誰かに語られやすい」重要な要素です。では、世の中にはどのようなモーメントがあるのでしょうか。

「モーメント」にも幅がある

モーメントには、法律の改正などといった「数年にわたる大きな社会の動き」から、“〇〇時〇〇分”といった「秒単位のピンポイントなとき」まで、幅があり、種類もさまざまです。

時間の幅が大きい順にカテゴリー分けしながら、ご説明します。

〔数カ月~数年〕 法律や制度の改正

法律や制度の改正など、社会で大きな変化が起きるときは、関連するテーマに対してメディア/生活者の関心が高まりやすいタイミングです。

例えば、2022年4月から、法改正により成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。政府が改正の方針を示した際はもちろん、実際に施行されるタイミングの数カ月前から、その変化による生活者への影響や生じる課題について、メディアで特集が組まれたり、断続的に報道されたりしました。

こうしたタイミングでは、テーマに関連する企業/ブランドの取り組みが報道メディアやソーシャルメディアに取り上げられる機会も多くなります。

成人年齢引き下げの場合だと、企業/ブランドの「新成人に対する取り組みやコミュニケーション」などが例です。

〔1カ月~数週間〕 季節のイベントや現象・事象

季節のイベントや毎年そのシーズンに起きる現象・事象は、ほぼ毎年同じ時期に同じテーマへの関心が高まるモーメントです。大体1カ月〜数週間続くことが多いです。

〔例〕
1月:「お正月」「帰省/Uターンラッシュ」「受験」
2月:「春休み」
3月:「花粉症」「卒業」「桜」「花見」「送別会」「防災(3/11前後)」
4月:「新生活」「歓迎会」「入学」「入社」「桜」「花見」
5月:「ゴールデンウィーク」「運動会」
6月:「結婚式」「梅雨」「夏のボーナス」「プライド月間」
7月:「海開き」「梅雨明け」「紫外線」「夏休み」
8月:「お盆休み」「猛暑/熱中症」
9月:「台風」「食欲/読書の秋」「シルバーウィーク」
10月:「紅葉」「食品ロス削減月間」「ピンクリボン月間(乳がん)」
11月:「学園祭」「七五三」
12月:「クリスマスシーズン」「忘年会」「大掃除」「帰省ラッシュ」

「お正月」や「夏休み」といった大型イベント、「花粉症」や「猛暑」といった事象や現象のほか、国や団体が制定した「〇〇月間」などもあります。こうした大型イベントなどは毎年報道され、ソーシャルメディアでもトレンドになりやすい傾向にあります。

企業/ブランドが行う取り組みも、こうしたモーメントに合わせて発信すると多くの人に届きやすくなります。夏休みのモーメントに合わせた、熱中症対策や子どもや家族に関する施策などが例です。

また、過去に事故・事件・災害などが起きた日は、風化を防ぐためにメディアが毎年取り上げたり、ソーシャルメディアでもトピックスとなったりします。そうした世の中のモーメントも把握し、配慮することも大切です。

〔1日~数日〕 公(おおやけ)の記念日や歳時

国が制定した祝日や記念日のほか、国連など世界の公的機関が指定している「国際デー」、公式な制定はないものの国内外で誰もが知る慣例的な記念日などがあげられます。一部その前後数日間にわたって話題に上るものもありますが、基本的にその1日に関心が集中する傾向があります。

〔例〕
1月:元旦(1/1)、成人の日(第2月曜)
2月:節分の日(2/2~4ごろ)、バレンタインデー(2/14)
3月:ひな祭り(3/3)、国際女性デー(3/8)
4月:エープリルフール(4/1)、入社式(4/1ごろ)
5月:こどもの日(5/5)、母の日(第2日曜)
6月:父の日(第3日曜)、夏至(6/21~22ごろ)
7月:七夕(7/7)、海の日(第3月曜)
8月:山の日(8/11)
9月:敬老の日(第3月曜)、秋分の日(9/22〜23ごろ)
10月:食品ロス削減の日(10/30)、ハロウィーン(10/31)
11月:いい夫婦の日(11/22)、勤労感謝の日(11/23)
12月:冬至(12/21~22ごろ)、クリスマス(12/25)、大みそか(12/31)

一部ではありますが、こちらに挙げたような一般的によく知られている記念日は、多くのメディアでも毎年話題に上ります。

例えば、成人の日には各地の成人式の様子や新成人が抱負を語るインタビューの映像がテレビで流れたり、敬老の日には、地域の子どもたちが高齢者施設などにプレゼントを贈る様子が記事化されたり。4月1日には、各社の入社式のうち、その年を象徴するようなものが紹介されます。こうしたモーメントに合わせて、企業/ブランドの関連するアクションなども一緒に報道されます。

ここ数年では、国連が制定した「国際女性デー」にあわせた、各企業の女性を応援/支援する取り組みやメディアでの特集も目立ちます。他にも、「食品ロス削減推進月間」や「世界メンタルヘルス・デー」など、社会課題に取り組む契機となるように制定されたモーメントでは特に、課題に対するさまざまな取り組みが注目されやすく、問題提起やアクションをしやすいタイミングといえます。

〔1日〕 企業/ブランド/団体が制定した「記念日」

国民の祝日など以外にも、企業や団体が制定した「記念日」もモーメントです。記念日の登録制度を実施している一般社団法人 日本記念日協会に申請して登録するほか、独自に打ち出しているパターンもあります。

自社の商品に由来した「◯◯(商品名)の日」を制定し、生活者の中でその商品を購入する恒例の日として定着しているものや、「◯曜日は◯◯の日」として曜日を起点にしたプロモーション活用もあります。

また、「いい夫婦の日」(11月22日/財団法人余暇開発センター〈現・日本生産性本部〉が提唱)や「耳の日」(3月3日/日本耳鼻咽喉科学会〈現・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会〉が提唱)など、あるテーマや課題に取り組む団体などが、そのテーマについて考えるきっかけになるように設定している日もあります。

毎年同じ日に取り組み続けることで、生活者に関心を持ってもらうきっかけにもなりますし、同じ日の記念日を持つ企業同士が、記念日をきっかけにコラボレーションするということもできるかもしれません。

〔時間単位〕 “数字に意味がある”時間

モーメントをさらに細かくすると「◯時◯分」といった単位もあります。この場合は、数字に意味があるケースが多いです。

例えば、アイドルグループやアニメなどに関連する施策では、そのグループを象徴する数字やキャラクターにまつわる数字、猫に関連する企画なら、鳴き声の「ニャン」にちなんで22時22分などです。

そのコンテンツのファンならいち早く理解できるような数字にちなんだ時間に発信をすることで、局所的な盛り上がりが生まれ、その盛り上がりの様子がトレンドやニュースになることもあります。

モーメントは、どう見つければいいの?

企業/ブランドに合ったモーメントを見つけるには、どこを探すのがいいのでしょうか。役立つツールをいくつかご紹介します。

〔参考〕各社が発行している「モーメントカレンダー」

◆日本記念日協会
「企業/団体が制定する記念日」についての説明の中でもご紹介しましたが、各企業や業界団体が制定した記念日は、日本記念日協会に登録されているケースが多く、公式サイトで検索ができます。

例えば、日本クラフトビール業界団体連絡協議会が登録した「クラフトビールの日(4/23)」や、一般社団法人インターホン工業会が登録した「インターホンの日(4/28)」などのように、特定の企業や商品に関連する記念日だけでなく、業界全体の盛り上げや啓発のために登録されたものもあります。

「日本記念日協会」公式サイト: https://www.kinenbi.gr.jp/

◆Twitter
ソーシャルメディア「Twitter」のサイトからダウンロードできる「Twitterモーメントカレンダー」は、これまでのツイートの傾向を分析した上で、Twitter上で盛り上がりやすいモーメントを月ごとにまとめています。(※登録制)

今感じたことを感じた瞬間にツイートするという、モーメントが表出しやすいTwitterだからこそ捉えられている情報が盛り込まれているので、一般的な年間イベントカレンダーだけでは見つけられないトピックを発見できるかもしれません。

Twitterモーメントカレンダー:
https://marketing.twitter.com/ja/collections/moment-calendar

◆note
このほか、noteでも、創作のヒントになる「note創作カレンダー」が発行されています。

note創作カレンダー:
https://note.com/info/n/n19bcd9d28d2b

◆その他
電通PRコンサルティング内のシンクタンク「企業広報戦略研究所」でも、ビジネス分野にフォーカスして、1年を通して注視しておきたい関連事項を時系列で整理した「ビジネス・イシュー・カレンダー2023」を作成しています。(※登録制)

ビジネス・イシュー・カレンダー2023:
https://prx.dentsuprc.co.jp/blog/c82#63d8c458c6a26e0e9d46be0e-1675940851572

単なる「便乗」でなく、取り組む意義を明確に

企業/ブランドが知ってほしい情報を発信するに当たり、世の中の「モーメント」を把握することで、生活者により届きやすく、参加してもらいやすくなる可能性が高まります。 

発信する情報を起点にして、モーメントを参考に発信時期を検討するのはもちろん、モーメント自体が企画のヒントになることもあります。

一方で、世の中の関心が高まっているからという理由だけで、安易にそのテーマに取り組むことは、ただ便乗している印象を与えてしまいかねません。そのテーマに、その企業/ブランドが取り組む意義や、どんな具体的なアクションを起こすことができるかを深掘りし、明確にしながら取り組むことが、最も大切です。


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