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「ファクトブック」は万能ツール。 “取材のきっかけ”から“社内情報の棚卸し”まで使い倒そう

PRに携わる方は「ファクトブック」、「ファクトシート」、「ファクトファイル」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。 

商品や企業の取り組みについて、メディアに新しい情報を簡潔に伝える「プレスリリース」に対し、「ファクトブック(ファクトシート、ファクトファイルなども含む)」は、プレスリリースや企業活動・商品特徴を補完するファクト(事実)を多面的にまとめた資料を指します。

「プレスリリース」と「ファクトブック」の違い

特にファクトブックは、

・なぜその企業や商品の取り組みが生まれた背景となる課題や目標
・企業創設や商品開発のストーリー
・定量的なデータを基にした業界動向

など、企業や商品を「より深掘りし、さまざまな切り口から伝えること」に役立ちます。ファクトブックは、主にメディアの方への補足資料として活用したり、取材対応の際に使用したり、プレスリリースとは使用タイミングは異なることもあります。プレスリリースのようにすぐにニュースにならなくても、後々の取材や報道につながることもあります。

さらに、外部に向けた情報発信だけでなく、作成過程で情報を一元化したり、既にあった情報の価値を再発見できたりと、「社内情報の棚卸し」に役立つことも特長の一つです。一石何鳥にもなる「ファクトブック」ですが、あれこれ詰め込みすぎると、かえって読みにくくなってしまう恐れもあります。

今回のnoteでは、ファクトブックを作ることで得られるメリットに加え、“読まれる&使える”ファクトブックを作るためのポイント、その使い倒し方について解説します。

企業や商品の“深掘り情報”が取材のきっかけに

冒頭でも触れましたが、新しい情報を簡潔に伝えるための「プレスリリース」に対し、企業や商品の背景や周辺にある情報を整理して、多面的に伝えることができるのが「ファクトブック」の強みです。

ファクトブックを通して、メディアの方に「この商品ができるまでにこんなストーリーがあったのか!もっと取材してみたら面白いかも」「この企業の情報は業界の現状分析に役立つ。解説記事に使おう」などと思ってもらえたら、今後の取材やメディアリレーションズにつながります。

例えば、ある家電ブランドでは、新商品を発売する背景として、家庭内の家事分担の見直しが進んだことや家電の需要変化、トレンド予測などについてまとめたファクトブックを発行しました。世の中の動きやトレンド、生活者の視点など、商品を取り巻く“世の中ゴト”な情報は、メディアやその先の生活者の関心も高いトピックです。

また“開発時の苦労話”や”失敗談”といったその企業にしか語れず、商品特徴を伝えるためのエピソードも、独自性があり価値の高い情報です。 情報を伝える相手(メディアの記者や生活者など)の立場から見て関心の高い情報が整理されていると、「この企業は知りたい情報を持っている」と思ってもらえるきっかけになります。

社内情報の「棚卸し」で価値を再発見

ファクトブックで企業や商品の歴史を整理する場合には、過去の情報(当時の画像や商品情報など)が必要になり、初動として社内情報をかき集めて整理することになります。そもそも「一元化した資料がない」「どこにデータがあるか分からない」「誰が知っているのか分からない」といった状況からスタートすることも多々あります。担当者の方は、思わず心が折れてしまいそうになりますよね…。

ですが、さまざまな部署に散らばる資料をかき集めて整理するこの作業こそが「社内情報の棚卸し」になり、とても大切な過程です。情報の棚卸しは、今後の情報発信に役立つ上、社内に眠っていた貴重な情報を掘り起こし、価値を再発見するきっかけにもなり得ます。 

あるメーカーでは、棚卸しの過程で広報担当者も知らない情報が出てきたほか、「誰が何を知っているのか」といった整理や、取材対象となる人材の発見にもつながりました。ファクトブックを作成したことで、「自社商品に関するデータを定期的に整理する風土ができた」「自社の歴史の振り返りによって、商品価値をあらためて考える機会になった」という声もありました。

企業の中には、実は魅力的な情報や知見が蓄積されているものですが、「中の人」がその価値に気付いていないということは多くあります。ファクトブックの制作をきっかけに、第三者の視点を取り入れてみると、新しい発見・気付きが得られるかもしれません。

 「特集ニュースの構成要素」から逆算して設計

メディアの方に重宝されるファクトブックを目指すには、「ニュースになる要素=生活者の関心に応える要素」から逆算して内容を考えることがポイントです。

便宜的ではありますが、プレスリリースなどをきっかけにした簡潔に情報を伝える「速報ニュース」、より深掘りした特集記事や特集番組などを「特集ニュース」と分けて捉えることができます。そして「特集ニュース」を構成する主な要素は「ヒト」「モノ」「エビデンス」の3つに分解できます。

多面的な情報を整理したファクトブックは「特集ニュース」にこそ、大きく活用できるものです。少しだけ話はそれますが、大事なポイントなのでここで「ヒト」「モノ」「エビデンス」を解説します。

① ヒト

報道を見ると、企業の担当者・業界の専門家・商品を体験した生活者・記者・コメンテーターなど、さまざまな「ヒト」が語っています。ある事象を伝える際には、「ヒト」を通して報道されることが多く、欠かせない要素のひとつです。

プレスリリースなどは企業主体の発信である一方、その商品やプロジェクトをもっともよく知っている開発者など、魅力的に伝えられる担当者の「語り」は、より説得力がありますし、その熱量に心が動かされることもあります。社内に限らず、社外の専門家に語ってもらうこともまた、説得力が増す要素の一つといえます。さらに、背景にある生活者の声は、商品や企業のストーリーについて、メディアや生活者が“自分ゴト”としてとらえるきっかけとなります。

ファクトブックでの「ヒト」活用例
・社内担当者が語る、商品の特徴/開発への思い/開発時の失敗談
・社外の専門家が語る、新商品の価値と意義/業界のトレンド
・生活者の声 など

② モノ

「モノ」はずばり、企業や商品そのものです。しかし大事なポイントは、企業や商品の自社目線の特徴だけでなく、客観的な情報を整理することです。例えば、「なぜその商品が必要とされているのか」という課題や「いまその商品に注目が集まっている」といったトレンド、同じカテゴリの商品と比較した優位性などです。

特に、自社の情報だけでなく、業界全体の情報も盛り込んだファクトブックになっていると、「業界全体のことも詳しいので取材対象になるかも」「業界の現状に関する意見も聞いてみたい」とメディアの方から興味を持ってもらうきっかけになります。

そうした価値ある情報を持っていることを知ってもらえば、すぐに記事化や取材につながらなかったとしても、世の中の動きにつれてその業界が注目された際など、何かのきっかけで取材対象として声がかかることもあります。 

ファクトブックでの「モノ」活用例
・企業活動や新商品の特徴
・同カテゴリ商品の最新トレンド
・業界構造の図解、業界全体の歴史、ブームの振り返り など

③ エビデンス

エビデンスは簡単に言うと「根拠」です。例えば、報道においては、アンケート調査結果や研究データなど定量的な裏付けや、専門家の見解などのエビデンスも必要不可欠です。“なんとなく”の感覚で語られたトレンドや傾向は説得力に欠け、根拠がないまま報道することを避けるためです。

そのため、企業や商品のファクトブックにもエビデンスの視点を取り入れるのがオススメです。客観的な「数字から見る自社や商品」に敏感になり、定期的にリサーチを実施したり、データを整理したりしておくと、いざというときに便利です。

▼ファクトブックでの「エビデンス」活用例
・自社商品の新機能に関するアンケート結果
・全世界の〇カ国・地域に出店を展開している
・業界推移、業界シェア など

4つの「やすい」がポイント

ここでは、ファクトブックの「まとめ方」についてご紹介します。社内からたくさんの情報を収集し、読んでほしい要素をつい盛り込みすぎて、全体の情報量や文字の割合が多くなってしまうことがあります。

せっかく良い情報が書かれているのに、どこにあるかすぐに見つけられず、使いづらいと思われてしまうことがあります。“読まれる&使える”ファクトブックを目指すために、重視したいポイントは4つです。 

① 読みやすい量

ファクトブックのボリュームは多くても10〜15ページ、中にはA3見開き2ページ程度に抑えるものもあります。集めた情報を全てをファクトブック内に盛り込む必要はありません。先ほどの“逆算”の視点を持ち、情報を取捨選択して、適切なボリュームに抑えましょう。また、トピックスのテーマに「ひと目で見出し分かる」をつけたり、文章が読みやすいようにレイアウトする、といった工夫も効果的です。 

②分かりやすいビジュアル

特にデータ関連は、そのまま載っているだけでは正確な読み解きに時間がかかり、理解しづらい場合があります。伝えたい情報をグラフや図解でビジュアライズすることも、分かりやすさにつながるポイントです。ひと目で情報が理解できる上、記事や番組で使うイメージを持ちやすいというメリットがあります。ある企業が自社商品の歴史を、商品の画像を含めて年表にまとめたところ、「このまま記事に使える!」と記者から好評だったそうです。

ここの「分かりやすい」で留意したいのは、対外的なデザイン面の見栄えばかり気にして作り込み過ぎてしまうこと。あくまでも「補足資料」として分かりやすいものという意識を持てるとよいでしょう。

③ 配りやすい体裁

例えば、「1テーマにつき1ページ〜1見開き」といったレイアウトルールにのっとって作っておけば、テーマ別での配布が可能です。メディアの方が興味を持ったテーマに該当するページだけ抜粋して配布できますし、フルで渡す場合にも、ページ・見開き単位でテーマがまとまっていると読みやすさにつながります。そのため、改編できない・抜粋できないようなパンフレットや冊子は避けておきたいものです。

➃ 更新しやすいフォーマット

3つ目の「配りやすい体裁」にもつながりますが、ファクトブックは一度作って終わりではなく、掲載する情報は随時更新していく必要があります。例えば、パワーポイントでマスタを作っておいて更新し、必要なページをPDFで配布するなど、データで保管し、いつでも誰でも編集可能にしておくことも更新しやすさのポイントです。

「対メディア」だけでなく、社内外で使い倒す

せっかく作ったファクトブックですから、対メディアの広報ツール以外の用途でも大いに使い倒したいものですし、使える場面はたくさんあります。例えば、ファクトブックの情報の一部を、ソーシャルメディアの公式チャネルで発信/採用サイトに掲載/社内のイントラネットに転載/周年誌への活用…など、対メディアに限らず、社内外で使えるさまざまな場面があります。

さらには、対外的な情報発信でなくても、整理された情報は企業の「営業ツール」としても有効です。実際に活用している企業担当者の方もいます。

ここまで、ファクトブックの構成や制作のポイントなどをお話しました。「なんだか時間と労力がかかってつくるのが大変そう…」と思われるかもしれません。もちろん企業や世の中の動きに合わせて少しずつ日々アップデートしていくことが必要です。しかし、ベースをつくっておけば単なる広報ツールにとどまらず、「社内の情報整理・棚卸し」「人材の棚卸し」「今後の情報発信への活用」など多くのメリットが得られることが期待できます。

ぜひ、企業や商品のファクトブックの作成にトライしてみてはいかがでしょうか。


「PRX Studio Q」は、PRエージェンシーのプランニング専門チームです。コミュニケーション設計やプランニング、制作など、もし興味をお持ちでしたら、お気軽にご相談ください。
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