見出し画像

恵方巻きのフードロスを減らすため、予約販売を増やすには?|ブレストのコツ

「急にブレストに呼ばれたけど、どうしよう…!」
「自由にアイデアを出してって言われても、思いつかない…」

ブレストを前に、こんなふうに緊張してしまったり、苦手意識を持っていたりする方に向けて、アイデア出しのヒントを考えるシリーズ【アイデアの広げ方 ブレスト60分】

PRXStudioQのメンバー4人が、1つのテーマに対し60分間ブレストを行い、その様子を紹介しながらポイントをお伝えする記事です。

前回は、「自転車ユーザーのヘルメット着用率を上げるには?」というテーマでブレストを行いました。

第2回のテーマは、
「フードロスを減らすため、恵方巻きの予約販売を増やすには?」。

新たなメンバーが参加するため、前回とはまた違ったプロセスでブレストが進みました。それぞれどんなことを意識しながらアイデアを出していたのか、ポイントを解説します。

メンバー紹介


STEP0:前提知識の整理(10分)

今回も、ブレストの前に、テーマについての事前知識をメンバーで確認しました。
「恵方巻きのフードロス」については、下記のような現状があります。

フードロス問題の専門家による推計(2023年)

■上の図は、フードロス問題の専門家による独自の推計(※1)データです。
2023年に全国で売れ残った恵方巻きは推計256万5,773本
・同年の恵方巻きによる経済損失は約12億円(1本当たり500円と想定)
・恵方巻きを廃棄するために排出される二酸化炭素量は推計1,354トン

■食品ロス削減推進法が施行された2019年以降は、農林水産省が恵方巻きの予約販売を呼びかけ、2023年2月2日までの間に89事業者が予約販売に応じたとしており、企業のフードロス対策が進む。(※2)

■一方で、「単価の高いおせち料理やクリスマスケーキでは予約販売が効果的だが、単価の低い恵方巻きの場合、予約販売の効果は限定的」という意見も。

恵方巻きのフードロス削減を考える際、小売業や流通の課題なども含めると、テーマが広くなり過ぎてしまいます。このため、今回PRXQでブレストをするテーマとしては、「予約販売を増やすこと」に焦点を当てました

これらの情報を踏まえて、いよいよブレストスタート!


STEP1「広げる」:5W1Hを切り口に「恵方巻きの楽しみ方」を考える(30分)


今回のSTEP1では、「恵方巻き」のイメージや食べる目的、食べ方、そして食べるタイミングについて、意見を出し合いました。

まずは恵方巻きの概念や可能性を確認していくことで、その後「予約販売を増やすために活用できそうなアイデア」に昇華する土台をつくります。

恵方巻き、食べる?食べない?

森光:皆さん、そもそも恵方巻きって食べます?

深谷:あんまり食べないかも。

森光:私は実家にいるときは食べてた。

中曽根:私は逆で、実家では食べなかったけど、独立して自分でスーパーに行くようになってから食べるようになった!

鶴岡:自分は特殊だと思うけど、恵方巻き自体が大好き。節分の日は、「いろいろな太巻き寿司にアクセスしやすい日」だと捉えてる!

一同:(驚!)そんな人もいるんだ!「太巻き寿司にアクセスしやすい日」とは?!

鶴岡:おいしい太巻き寿司が脚光を浴びるのは節分しかないから、太巻き寿司を好む「太巻き寿司ラバー」にとってはこの上ないモーメントとして捉えている、という意味です。でも、クリスマスなどと比べて、なんとなく節分で盛り上がっている人って恥ずかしく感じて、あまり人に言えないんだよね…。

メンバー内だけでも、恵方巻きとの距離感や目的はさまざまでした。これは、楽しみ方にももっといろいろな選択肢があるのでは?という気付きにつながりました。

森光:予約の方法だけを盛り立てても、食べ方や参加の仕方が楽しくなければ広まらないアイデアになってしまいます。まず楽しみ方を検証することは大切かも!

恵方巻きの楽しみ方を広げるに当たって、恵方巻きを「5W1H」(特に「WHAT」「WHEN」「WHERE」「HOW」)の切り口で捉え直していました。

例えば、
「WHAT(何)」は節分や恵方巻きが皆にとってどんなものか?どんな意味があるのか?
「WHEN(いつ)」は恵方巻きをいつ食べるのか?
「WHERE(どこ)」は恵方巻きをどこで食べるのか?
「HOW(どうやって)]は恵方巻きをどうやって食べるのか?どうやって作るのか?
といった切り口です。

WHAT:「自分と向き合う時間」に変換

まずは「無言で食べる」という恵方巻きの特徴から、議論が広がりました。

森光:私は食事中も仕事をしてしまうことが多いから、恵方巻きのように「食べることに集中する時間」ってとても貴重だと思った。「今年はこういう年にしたいな」と内省の時間にするのはどうかな。

深谷:年始に立てた目標を振り返る日とか。

中曽根:2月の初めって、新年の目標をいったん忘れちゃう時期だから、振り返るきっかけになるかも。

WHAT:節分は「料理を休む日」と捉える

鶴岡:節分を「料理を休む日」と捉えるのはどうかな?家族の中で料理を担当している人が「休める日」として、「2月3日(※3)は台所休みの日です」って定めてしまうとか。

森光:たしかに、家事って事前に休むと決めないと、急にはなかなか休めない、という問題はありそうだから、休むきっかけになりそう。

中曽根:カレンダーアプリとコラボするとかいいかも!

深谷:自分で休みを宣言するのもいいし、家族から「恵方巻き食べたいから」と言い出してもらえるとさらに休みやすくなるかもしれないよね。

※3:節分は年によって2月3日とは限りませんが、例としてこの日を挙げています。

WHEN:無言でも伝わる「応援ツール」に

「WHEN」「HOW」「WHERE」といった、食べるタイミングや食べ方でも考えていきます。

鶴岡:節分ってシーズン的には、受験だよね。私立大学の一般入試が行われている時期。

森光:受験間近で気が張りつめているわが子に「がんばれ」とも言いづらいタイミングで、親子のコミュニケーションのきっかけになりそう。受験の応援でよく活用されている、あの有名なチョコレート菓子みたいな。

深谷:応援ツールにして、子どもが好きな食材を詰め込んであげるとかでも、愛情も込められていいよね。

HOW:作り方に一工夫「巻かない恵方巻き」

中曽根:あえて巻く直前の恵方巻きを売って、最後に親が一品加えて、巻いて子どもに渡すのもいいかも。巻かないおにぎり「おにぎらず」的な感じで。

鶴岡:料理が苦手な人でも、手作りにチャレンジするきっかけになりそう。

深谷:「恵方巻きかず」だね!

森光:恵方「負かず」っていう名前にすれば、受験合格の願掛けの意味にもなりそう。

WHEN/WHERE:縁起チャージもタイパ重視?

森光:副菜や汁物もほしい!という人にとっては、食事が恵方巻きだけ、というのは物足りなく思うかも。いっそのこと間食という位置付けにしてみるとか? 急いでいる人に向けて食べやすい大きさにして、食欲も縁起も時短でチャージできるものにしちゃう。

中曽根:手軽にカロリーをチャージできるゼリー飲料やカロリーバーとコラボするのもいいかも!ちょうど受験シーズンだし。

WHEN/WHERE:デートの口実「恵方券余ってるんだけど…」

「具体的な内容よりも先に言葉を思い付いた!」という森光のアイデアから議論が広がることもありました。

森光:「恵方巻き」という字を見ていて、言葉だけ思い付いたんだけど、「恵方巻き」の「巻」の字を、似ている漢字の「券」に変えた「恵方券(けん)」っていうのはどう?予約と券ってセットな気もするし…。

鶴岡:「券」にしておくことで、誰かと食べる口実にできそう。「チケット余ってるんだけど、ライブ一緒に行かない?」っていうのと同じノリで。

森光:「一緒に恵方巻き食べない?」っていうデートのお誘い、かわいいなぁ。

STEP2「絞る」:予約販売を増やすために、使えそうなアイデアは?(20分)

ここまでは恵方巻きの食べ方・楽しみ方などを広げてきました。

STEP2では、出てきたアイデアも踏まえながら「予約販売を増やすために活用できそうなアイデア」を深めていきます。

参加してくれる人を増やすには、生活者の関心や問題とマッチしているか?も重要なポイントになります。

では、ブレストで出たアイデアの一部をご紹介します。

〔アイデア01〕「受験の応援」をサポートする贈り物に

まずは前半で出ていた意見の中から、恵方巻きの予約につながりやすそうなものをピックアップして、アイデアを深めます。

深谷:前半で「家族の受験、どう応援していいか分からない問題」が挙がっていたよね。ギフトと同じ考え方で、応援メッセージとか、志望校名を入れられる応援ツールにすれば、予約するきっかけになるかも。

森光:暗記したいものをパンに書いて食べると暗記できるという、ドラえもんのひみつ道具「アンキパン」みたいに、覚えたい単語や公式をプリントできるとかもいいよね。

中曽根:さっき出ていたアイデア「恵方巻きかず」などのように、人によってカスタマイズして応援をサポートできるツールにすると使いやすいと思う

アイデア名:誰かを無言で応援できる、願掛けアイテム「恵方負かず」


〔アイデア02〕料理休み宣言のための恵方巻き予約

森光:「家事って、きっかけがないとなかなか休めない問題」もさっき挙がっていたよね。事前に決めて休むことと予約は相性が良さそう

深谷:さっき挙がっていた「カレンダーアプリとのコラボ」もいいし、例えば、恵方巻きのチラシ広告に「休みます宣言」シートを付けて、それを切り取って冷蔵庫に貼ることで家族に意思表示できるようにするとか。休めるきっかけと、休みやすい環境をつくり出せるといいよね。

アイデア名:「今日は料理休みます宣言」付きの恵方巻き

〔アイデア03〕1年の計画や目標と「予約」を絡める

森光:「予約を増やす」ことを考えたとき、普通の人は節分の準備をそんなに前からしないことってハードルだよね。

鶴岡:さっき、「年始の目標、2月には忘れてしまう問題」が出ていたよね。今年の目標やテーマを決めて1月初めに予約すると、それが恵方巻きに印刷されて2月に送られてくるとか。

深谷:「追いかけてくる恵方巻き」

中曽根:予約する意味が出てきますよね。ポジティブなプレッシャーになればいいな。

森光:目標を食べる、っていうのもいいね。目標を自分に取り込む。親子とか会社でやってもいいかも。目標を共有する機会にもなりそう。

アイデア名:1か月後に目標を確認しに来る「追いかけてくる恵方巻き」

〔アイデア04〕年始の願掛けからの再チャンスと捉える

深谷:お正月関連だと、おみくじで凶が出て落ち込んでいる人向けに、「恵方券」を配るのはどう?その券で予約することで、節分に恵方巻きを食べながら改めて縁起をかつぐ再チャンスをつくれるようにするとか。凶が出たことをポジティブに変換できる機会になるといいよね。

鶴岡:それなら、神社やお寺とコラボするとよさそう。おみくじの写真を撮って、コンビニで見せると恵方巻きが安くなるとか。

森光:ソーシャルメディアが凶であふれそうなのはちょっと心配…(笑)。

アイデア:凶が出て落ち込んでいる人に…幸運を願う再チャンス「恵方券」

〔アイデア05〕予約=環境への配慮の意思表示

議論が刺激になって、これまで出ていなかったアイデアも出てきました。

中曽根:選挙のときに、よく「投票行ってきたよ」と報告する投稿がありますよね。それと同じように、「フードロスの削減のために、恵方巻き予約しました」と報告できるソーシャルメディアのエフェクトをつくるのもいいかも。そのエフェクトを付けて投稿すると、「私は環境に配慮する活動に賛同しています」っていう意思表示にもなる。

鶴岡:「フードロス問題が気になってたけど、何からやっていいか分からない…」という人が「これなら自分もやってみよう!」と参加するきっかけにもなるね。知らなかった人が「こういう課題やアクションがあるんだな」という気付きにもなりそう。

深谷:恵方巻きだとより気軽に参加できそうだよね。

森光:この人すてきだな、と思ってもらえそうなアクションって参加したくなりますよね。

→アイデア名:「恵方巻き予約しました!」投稿用エフェクト

ここで60分が経過。ブレスト終了~!

アイデア出しのポイント

最後に、ブレストで意識していたことをそれぞれに聞いていきます。

ポイント❶:人のアイデアを否定しない

森光:絶対人のアイデアを否定しないこと。まず「いいね」と言うことを意識している。特に最初の方はみんな迷いながら発言するから、否定しないことでアイデアが出てきやすくなると思う

鶴岡:一番大事かも!メンバーの「心理的安全性」は確保すべきだよね。

ポイント❷:「身体の動き」を大きくすると、頭も動く

森光:ホワイトボードを使うことは有効だと思う。経験的に、一人身体的に動作が大きい人がいると、議論が活発になる気がする

鶴岡:ブレスト感、ディスカッション感を出すのは大切。意見が出やすくなるよね。

ポイント❸:言葉や文字で遊んでみる。時にはダジャレも

深谷:森光さんが出した「恵方券」のような言葉遊びも大切だよね。議論やアイデアの幅が広がる。

森光:くだらないことを言うのは大事ですよね。時にはダジャレも!

今日のディスカッションの中でも、なんとなくひらめいた「言葉」を出したり、ダジャレのような「文字遊び」を考えたりすることで、アイデアが広がるタイミングがありました。

ポイント❹:役割分担ができていると、議論が深まりやすい

メンバ―同士で、最初に役割分担を決めていたわけではありませんが、結果的にどんな役割を果たしていると思ったか聞いてみると…

「森光=進める(どんどん意見を出していく)」
・「深谷=深める(出てきた意見やアイデアを深めていく)」
・「鶴岡=立ち戻る(同じテーマでも、視点をずらして捉え直してみる)」
・「中曽根=具体化する(出てきたアイデアを具体化したり、実現できそうなアイデアに落とし込む)」

という役割にバランスよく分かれていたようです。

今回はこのような分担になりましたが、メンバー構成によって自分の役回りを柔軟に変えているという人も多いようです。

ブレストのパターンはさまざま

前回は、イシューを先に洗い出し、それを起点にアイデアに落としていきました。

今回は、アイデアを先に広げ、そのアイデアがどんな生活者のイシューとマッチするか、そして「予約販売を増やすこと」にどうしたらつながるか、という観点で絞り、深めていきました。

ブレストの進め方に正解はなく、今回私たちも「こう進めよう」とあらかじめ決めていたわけではありません。

一方で、幾つか進め方や役割のパターンを知っておくと、ブレストに臨むヒントになると思っています。

※1:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/99101a5fc81bbfd885ff0f8a084b9be1a8c1a99a
※2:https://youtu.be/TEfdMyVp30c
 



PRX Studio Q (電通PRコンサルティング)では、企業やブランドのPR戦略立案から企画、実行までをワンストップで対応いたします。PRスキルアップセミナーやアイデア発想ワークショップなども実施しています。ご要望に合わせて柔軟に対応いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。