PRX Studio Q
日本代表に選ばれたPRプランナーの「無意識を意識する」プランニング術
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日本代表に選ばれたPRプランナーの「無意識を意識する」プランニング術

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 世界最大の広告・PRクリエーティブの祭典「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」の、30歳以下を対象とした「ヤングライオンズ・コンペティション(以下、ヤングカンヌ)」PR部門の国内予選で、PRX Studio Qの佐藤佑紀が最高賞を受賞しました。

 「先進国の孤独を解決するためのグローバルキャンペーン」という出題テーマに対し、孤独を抱える人と、抱えていない人の双方を巻き込むべく、大手家具メーカーの製品に、孤独を解決する「家具の組み立て説明書」をつけるという企画をぶつけた佐藤チーム。今回は、金賞を受賞したこのアイデアについて、そしてアイデア発想の基になった「無意識を意識する」プランニング術について紹介します。

若手クリエーターの登竜門「ヤングカンヌ」とは 

 こんにちは、PRX Studio QのPRプランナー佐藤佑紀です。普段は、ソーシャルメディアを起点としたPRプランニングやコミュニケーションの企画立案を担当しています。

 私ごとで恐縮ですが、このたび、2022年ヤングカンヌPR部門の国内予選において、なんと金賞を受賞し、日本代表として世界大会に出場することになりました!!

 このnoteでは、課題発表から提出まで約1週間の制限時間内で、私たちがどのようにアイデアを思い付いたか、そしてどのように企画に落とし込んだかについて、僭越ながらお話しします。

 まず、ヤングカンヌとは、世界最大の広告・コミュニケーション関連のアワード・フェスティバル「カンヌライオンズ」の、30歳以下を対象にしたコンペ形式のプログラムのことです。簡単に言えば、「広告やPRのアイデアを競い合う世界大会」のようなもので、業界の若手の登竜門とされています。

 2人1組のチームで出場し、出題される特定のグローバル課題を解決するためのアイデアを競います。フィルム部門、メディア部門、PR部門など全7部門に分かれ、各国の国内予選で1位になったペアが代表となり、6月に行われる世界大会に出場。日本ではPR部門の応募数が例年最も多く、今年は102組のエントリーがありました。

 今回、PR部門国内予選の出題内容は以下でした。

課題:「先進国で孤独を抱えて暮らす人々の問題を解決するためのグローバルキャンペーンを企画せよ」
ターゲット:先進国の一般市民
想定クライアント:孤独の問題を解決するために設立された架空のアライアンス「Global Loneliness Prevention Alliance」

 課題発表から約1週間後の期限までに、参加チームは10枚以内の企画書と、それを1枚に要約したプレゼンテーションシートを提出しなければなりません…!

 ヤングカンヌはまさに時間との勝負です。私にとって4度目の挑戦となった今回、計画を練り直すような時間の余裕がないことはよく分かっていました。そのため、過去の受賞作品の傾向を自分になりに以下のように分析し、当初からこの傾向を踏まえた立案を行うことでタイムロスを最小限にしました。(毎年の受賞作品のチェックだけではなく、過去の受賞者の方が主催する勉強会にも何度も通いながら、傾向をつかんでいきました!)

① ターゲットの態度変容だけではなく行動変容まで担保できること
② 一過性の企画ではなく、継続性があって持続可能であること
③ ターゲットが実際に体験できるものであること
④ 国内だけではなく、世界共通の”あるある”が起点になっていること

困りごとや不満から無意識を洗い出す

 私はプランニングする際、「無意識を意識する」ということからスタートするようにしています。近年「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」という概念が注目を集めていますが、慣れ親しんだ習慣や当たり前の裏に隠れた「生活者の課題」を見つけることが、社会との合意形成を意味するPR(パブリックリレーションズ)のヒントになることが多いからです。

 今回もまず、孤独にまつわる「無意識の当たり前」を洗い出すことから始めました。「孤独ではないこと」が当たり前とされている、つまり2人以上いることが「前提」にされている事象やサービスは何か。例えば、手紙のやり取り、飲み会の乾杯、仕事の名刺交換、カードゲームやハイタッチなどなど——。思いつくままにどんどん出していきました。

 その中で私たちが白羽の矢を立てたのが「家具の組み立て」です。

 世界的な大手家具メーカーの説明書には「2人以上で組み立ててください」と書いてあることを思い出し、当然のように書かれている説明書の「当たり前」が孤独を抱える人々を苦しめているのではないか、と考えたからです(この「当たり前」を”無意識”に許している人の数が多ければ多いほど、生活者の行動変容を促すことができる“優れた”アイデアになると考えています)。

 生活者の困りごとの「兆し」が見つかったら、次に、本当にそのような悩みを抱えている人がいるか確認するために、ソーシャルメディアの投稿を分析します。

 家具の組み立てに関する投稿を探してみたところ、「頑張って一人で組み立ててみたが孤独に気付いてつらかった」、「手伝ってくれる人がいない」「友達はいても自宅に呼んで組み立てを頼めるほどの仲ではない」などの生活者のリアルな声が見つかりました。私たちの予想通り、家具の組み立てを通じて、孤独という課題に直面する人々の存在が浮かび上がりました。

 ここまでのプランニングのプロセスを整理すると以下のようになります。

  1. 当事者の気持ちになって困りごとや不満をまずは思いつくだけ挙げる。

  2. その中から、家具の組み立て説明書のように、すでに不文律化されてしまっているものや状況を見つける。

  3. ソーシャルメディアの投稿を分析し、生活者のさらに細かいインサイト(生活者の中でまだ顕在化していない無意識的な欲求や不満)をつかむ

 世の中にある無意識の当たり前への疑問を起点に、①~③のプロセスを踏むことで企画に落とし込んでいきました。①~②で考えついたものが、③のソーシャルメディアで見つからないという場合は、生活者の課題がニッチ過ぎて企画として展開しづらい可能性があるためもう一度①に立ち返るということを繰り返します。

 過去にヤングカンヌに挑戦した際、せっかく良いコアアイデアを思いついても、「課題の原因って本当にそれなんだっけ?」、「そもそもそういうターゲットっているんだっけ?」と、後から修正点が浮かび、タイムロスしてしまうということが多くありました。今回はそれが起きないように、アイデアを具体化する前のタイミングでとにかく①~③のフローを丁寧に検証しました。

孤独を解決する「家具の組み立て説明書」

 そのような手順を経て、私たちは、家具の組み立てを通して孤独に直面する人に向けた、新たな説明書をつくるというアイデアへ落とし込みました。

 その際に留意したのは、孤独ではない人も巻き込むことです。今回のターゲットは先進国の一般市民とされているため、孤独の課題を抱えている当事者だけではなく、課題を抱えていない人にとっても、興味深いキャンペーンである必要があると考えたからです。孤独ではない人が孤独な人に一方的に手を差し伸べるようなキャンペーンにならないようにしようというのが、チームでの共通認識でした。

 このキャンペーンで傷つく人はいないか。押しつけがましくないか。偽善に感じないか。この点をケアできておらず、不本意に「炎上」という形で世の中に広まってしまうキャンペーンも少なくありません。孤独を抱える人と、そうではない人の差異を強調するのではなく、「誰もが日常生活の中で孤独の存在に気付くこと」を方向性として定めました。

 そして、世界最大手家具メーカーとのコラボを想定し、その製品に「①1人用の組み立て説明書」と「②2人用の組み立て説明書」の2種類の説明書をつけるというアイデアを考えました。

 それぞれの説明書の最後のページには、今回の想定クライアントであるアライアンスからのメッセージを記載。1人用の説明書には、「すべての問題を1人で解決する必要はありません」とし、アライアンスに相談できる窓口の連絡先も載せました。一方、二人用の説明書には「孤独が原因で、この家具を安全に組み立てられない人がいます」と記載し、アライアンスへの寄付など、協力を募りました。

 そして両方の説明書には共通して、アライアンスが家具メーカーと共催する「懇親パーティー」への招待状も同封しました。パーティーは、孤独を抱える人と、孤独な人をサポートしたい人が出会うことを目的としています。初対面の人同士でも、助けを求めるハードルと、サポートを申し出るハードルの双方を取り除くため、会話が生まれるやすいオフラインの場を設けることにしました(大手家具メーカーが注力する食品領域をPRする機会として、企業にとっての参加メリットも担保しました)。

 さらに、これらを一度きりのイベントではなく、継続的なキャンペーンとして展開すべく、「誰もがどこにでも所属できる世界を創造する」を企業理念に掲げる大手民泊仲介サービスと提携することで、パーティー会場のコストを軽減するという計画も考えました。

4度目の挑戦で受賞した金賞

 アイデアを固めたところで、迫る期限に追われるようにプレゼンテーション資料にまとめ無事に提出しました。

 ヤングカンヌは約1週間という制限時間の中でプランニングをしなければいけないからこそ、日々の業務で培った思考やノウハウを実践するとてもよい機会でした。今年30歳になった私は、今回が応募資格のあるラストイヤーでした。新卒で電通PRコンサルティングに入社して以来、約8年間、コツコツとPRと向き合いながら3度の落選を経験し、4度目の挑戦で頂いた金賞です。これまで、落選をするたびに悔しい思いをしましたが、一歩ずつPRプランナーとして成長することができたとも実感しています。若手PRプランナーの皆さんにはぜひ、腕試しのつもりで挑戦してほしいです。その際に、このnoteが少しでも皆さんに役立てば幸いです。

 2022年5月末には、予選を勝ち抜いた各国代表チームと競う本選がありますので、気を緩めず準備したいと思います!(応援の代わりにスキ(♥)を押していただけると大変励みになります!)

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