パーパスは「人々が手を取り合うための合言葉」
近年、ESGやSDGsに対する顧客や株主・投資家の関心や、社会課題解決に高い意欲を持つ若年層・働き手の意識変化を背景に、企業やブランドの存在意義や志を示す「パーパス」に対する関心が高まっています。
実際に「パーパス」を含む新聞記事の報道件数を見てみると、以下の図(ELNET記事検索結果をもとに作成)の通り、直近1年間は565件と、4年前の約7倍、昨年の2倍以上に上ります。
パーパスの定義はさまざまですが、簡潔にいえば「企業やブランド、組織の社会における存在意義」。
皆さんの所属する会社や組織でも、パーパスを掲げられているのではないでしょうか。とはいえ、すぐにそのパーパスが頭に浮かび、実際の仕事や行動に反映できているかというと、なかなかそこまでは…というのが実情ではないかと思います。
筆者は、企業の内外に存在するあらゆるステークホルダーが手を取り合うための合言葉として「パーパス」を捉えています。今回は、このパーパスについて考えていきます。
こんにちは、PRX Studio Qの岩澤です。
パーパスは、北極星であり、原動力
パーパスは、社会が大きく変化し、先行き不透明な時代において、社内外のステークホルダーに対して、社会における組織の目指す行き先、どこに向かって歩んでいくのかを示す一筋の光、「北極星」といえます。
また、パーパスによって、企業や組織の行き先が明確になると、一貫性と一体感がもたらされます。社内でいうと、社員のモチベーション向上や共通の「価値基準」になり、内部の意思決定も迅速になっていきます。
社外でいえば、顧客や株主といったステークホルダーとのエンゲージメント強化やブランド価値向上、ひいては業績への貢献という効果が期待できます。つまり、自社の独自価値を礎に「社会をより良くしていくための原動力」となります。
このように、うまく機能すれば、さまざまな効果が期待できるパーパスですが、“掲げるだけ”では意味が無く、実践しなくてはその役割を果たせません。
筆者は、パーパスを発見し、実践する目的を「企業やブランド、組織の未来に対する、ステークホルダーを含む“パブリック”からの期待値を上げること」であると理解しています。聞こえのよい言葉をつくるのではなく、社員の皆さんと伴走し検討を重ねていくことで、「らしさがあり、ワクワクし、誇りと共感をもって実践できるパーパス」の策定をサポートしていきたいと考えます。
パーパスを導く課題設定
「自社ならではのパーパス」を発見するためには、“らしさ”という独自性のある強みと、自社の起源を深く掘り下げることに加え、社会とどういう関係を構築していきたいのかという課題設定が欠かせません。
― どのような社会課題と向き合いたいのか。
― その先にどのような社会の実現を目指すのか。
― 社会に対する自社のスタンスはどうなのか。
その際に注意しなければならないことは、課題の視座を高めすぎると、どうしても抽象度が高くなり、他社でも言えそうな総花的で同質的な言葉になりがちなことです。
このようなことを避けるためには、「社会課題×企業活動の強み」という視点から、自社らしいユニークネスを見いだしていくことが重要です。時代の流れを押さえ、企業活動の対象となる適切な社会課題を設定・提起すること、そして自社が提供する価値でその課題にどのようなアプローチができるのか、を検討することから始めます。
過去から現在までの知識と経験を振り返り、未来に向けて自分たちが真に取り組む社会課題を見つけること、つまり、「As is(現在までの歩み)」と「To be(ありたき姿)」が、独自性を有したパーパス発見の大きな一歩につながります。
社会との合意形成を図るパブリックリレーションズ(PR)の考え方も、このパーパスを発見する際のアプローチと似ています。PRX Studio Qでは、PR戦略立案時に、「エクリプスモデル」というコアアイデア創出メソッドを活用することがありますが、このモデルはパーパス策定にも応用できます。
まずは、「社会課題」と「企業活動の価値」の交点から自身の「ありたき姿」を導き出します。そこからさらに言葉を磨き上げ、パーパスを紡いでいきます。このあたりは、また別の機会に詳しくお話しできればと思います。
パーパスの実践と実装
パーパスを策定したら実践、そして実装というフェーズに入っていきます
このフェーズが非常に重要な箇所であり、おろそかにすると、せっかくつくり上げたパーパスが形骸化してしまうことになります。
実装の手前、浸透・実践の段階では、大きくインターナル(社内)、エクスターナル(社外)の二つのステークホルダーに向けたコミュニケーションがあります。ここではお互いをうまく連携・循環させていくように設計し、双方にバランス良く取り組むとよいでしょう。
具体的な施策として、社外向けには、トップからの発信や、各種メディアを活用したコミュニケーション施策など、さまざまな手法が存在します。
社外への情報発信により外部でよい評判(レピュテーション)を形成し、「社内に跳ね返ってくる流れ」をつくれるとインターナルにも効果を発揮します。その他にも、インターナルでは、社員参加型ワークショップや、社内の対話会、個人パーパスの策定、浸透ツールの活用等々があります。
このインターナル活動では、特にトップをはじめとした社内外発信やツール活用等により、まずは組織のパーパスを個々人に根付かせ、社内での対話や上長との1on1ミーティングを通じて、自身のパーパスと重ねていくことができるようなきっかけづくりがポイントとなります。
当社の社内シンクタンクである「企業広報戦略研究所(C.S.I.)」の調査(下記グラフ)によると、自社のパーパスと自身のパーパスが合致することで、自身が所属する組織へのエンゲージメントが高まるというデータがあります。両者が重なることでモチベーションやパフォーマンスが向上し、組織全体が共鳴することで、好影響につながります。
その先に、社内での人事・評価制度への反映やアワードの開催、プロダクトやサービスといった事業への展開、共創によるブランドアクションなど、パーパスをさまざまな領域で追求し、組織に内包させていきます。
パーパスを策定、あるいは改めて社内共有し、あらゆる領域で実践・実装することによって、自社や組織、個人を変えていく大きな契機となっていくはずです。
今回は「パーパス」についてまとめました。PRX Studio Qでは、パーパスの策定支援やコミュニケーション設計を行っております。もし興味をお持ちでしたら、お気軽にご相談ください。
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