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インフルエンサーと企業/ブランドの”よい組み方”って? 〈子育てインフルエンサー・木下ゆーきさん〉

  企業やブランドの認知や価値向上に貢献するインフルエンサーとのタイアップ。ファンやフォロワーに共感してもらう企画にするには、インフルエンサーが持つ「文脈」を活かし、ブランドとインフルエンサーが「ミッションマッチ」できるかを意識することが必要です。

「インフルエンサーの文脈」に関するnoteはこちら

  今回は、PRX Studio Qのプランナー松尾が、赤ちゃん用おむつブランド「グーンプラス」の企画でタイアップを行った“子育てインフルエンサー”木下ゆーきさん(Twitter:@kinoshitas0309)と、企業とインフルエンサー、生活者にメリットがある「Win-Win-Winな組み方」について考えました。

 〈プロフィール〉木下ゆーき
子育てインフルエンサー、タレント。元シングルファーザーで3児の父。「子育てに笑いを」をコンセプトに、忙しいパパやママに向けた育児情報をTwitterやInstagramで発信中。アパレル店員風のおむつ替え動画をきっかけに人気を集め、ソーシャルメディアの総フォロワーは36万人以上。著書に『ほどほど育児 失敗したっていいじゃない』(飛鳥新社)、『世界一楽しい子育てアイデア大全』(KADOKAWA)。
Twitter: @kinoshitas0309
Instagram: kinoshitayuki_official

あなたにしかできない!お互いの「ミッションマッチ」が強力なコンテンツに


松尾雄介(以下、松尾):
木下さん、お久しぶりです!木下さんとは、私がPRプランニングを担当した大王製紙さんの「グーンプラス」のプロジェクト「おむつにできることなんだろう?」で、一緒に取り組ませていただきました。

木下ゆーき(以下、木下):ご無沙汰しています!あ、この前もオンライン飲み会しましたね(笑)。

「おむつにできることなんだろう?」プロジェクトとは
2020年、大王製紙がエリエールブランドの乳幼児向け紙おむつ「グーンプラス」の発売をきっかけに立ち上げた、育児の悩みに向き合うプロジェクト。松尾がPRプランニングを担当し、タイアップインフルエンサーとして木下さんも参加。“家族子育て”を推進するブランドアクションとして、「マザーズバッグ」と呼ばれることの多い子育て用バッグの名称を変えた「ファミリーバッグ」を制作。さらに、木下さんの人気シリーズ「笑えるおむつ替え動画」のグーンプラス版なども公開した。乳幼児用おむつ市場における「グーン」ブランドのシェアを伸ばした。さらにPRovoke Mediaが主催する「2021アジア・パシフィックSABREアワード」でゴールドSABRE受賞。

松尾:育児の悩みに向き合う本プロジェクトを始めるに当たり、ブランドからの一方的な発信ではなく、当事者目線で、同じ方向性や想いを共有できる方と一緒にプロジェクトを推進したいと考えました。仲間になってくれることで、活動も加速することができ、愛されるブランドにつながっていく、という考えでした。

そのとき、木下ゆーきさんのことが思い浮かびました。以前、ソーシャルメディアで何度か拝見した木下さんのおむつ替え動画が記憶にありました。少し調べると「子育てに笑いを」という想いで“子育てインフルエンサー”の活動をされていることが分かり、さらに当時おむつ着用中のお子さんを子育て中でもあり、今回のプロジェクトにピッタリ当てはまるのではと感じました。「絶対一緒にやりたい!!」と、企画書をつくって猛オファーしました。快諾いただいた決め手は何でしたか?

木下:いろいろありますが、最初に企画をもらった時に、僕に期待されている役割が明確に示されていたのが大きいです。世の中のママとパパの感じている育児悩みに向き合うという企画趣旨を見て、すぐに「これは僕にしかできない内容だ」と。

インフルエンサーとして活動しているとさまざまなタイアップのお話を頂きます。ただ、中には子育てと無関係な商品やサービス、不特定多数のインフルエンサーに一斉送信しているのかなと思うような内容で依頼を頂くこともあります。でも、松尾さんからのオファーは、僕のこれまでの発信や、普段から大事にしていることを理解していただけている印象で、その時点で非常に信頼できると感じました。

松尾:依頼時に「あなたにどうしてもお願いしたいんです!」という内容と熱量を、きちんと伝えるのが大事ということですね。

木下:そのラブコールは刺さりました(笑)。自分と親和性の高い内容だったからこそ、企画書を読んでいるうちに「他にもこんなことができそう」「ここを変えたらもっとよくなりそう」と、アイデアが次々と思い浮かんでワクワクしました。もちろん、商品も「自分の子どもにも使いたい」と思うものでした。

インフルエンサーの強みを活かせる「余白」を企画に残す

松尾:プロジェクトでは、木下さんの代名詞でもある「おむつ替え動画シリーズ」をベースにした動画企画と、「マザーズバッグ」という名称を改めた新たな育児用バッグ「ファミリーバッグ」開発企画を一緒に進めました。プロジェクトに参加してみて、いかがでしたか?

木下:結構ガッツリ何度も打ち合わせしましたよね(笑)。育児課題に寄り添いながら、皆さんのチームとアイデアを持ち寄って議論する過程が新鮮でしたし、とても楽しかったです。おむつ替え動画をリメイクしたのは「グーンプラス」が初めてでしたが、 双方向で意見を出し合うことができ、普段の自分らしさを出せる企画でした。

松尾:依頼段階では、全てをガチガチに固めず、「余白」を残した状態でした。それは、日々ソーシャルメディアなどを通じて世の中と向き合っている木下さんならではのリアルな意見をいただきながら、伝わる企画を一緒につくっていきたいという考えでした。深く一緒に入ってもらえて、本当に感謝しています。

木下:インフルエンサーによって進めやすいやり方は異なると思いますが、僕の場合は「こういうことをしてください」と最初から決まった指示を頂くより、ある程度の方向性をもらいながら「どんなことをしようか」という段階から一緒に進める方が合っているなと。そういう意味で、今回のプロジェクトでは、皆さんとの歯車がガチっとうまくかみ合ったと思います。

松尾:このプロジェクトは1回だけの単発ではなく、1年という比較的長期間にわたって、複数の取り組みをご一緒しました。企業とインフルエンサーの方のお互いにとって、短期的ではなく、長期的に取り組むことで、目指す想いを実現でき、得られるものもあると改めて思いました。

木下:タイアップは基本的に単発が多いので、なかなかない機会でした。一定期間携われたことで、僕自身がブランドや商品について触れたり考えたりする機会も増え、必然的に商品愛も深まっていくことで、こちら側からどんどん提案もしやすかったですし、コミュニケーションも円滑になっていったなと。

あと、ソーシャルメディアでコアなファンを増やすためには、「物語を見せる」ということも重要なので、その点でも長期プロジェクトでよかったなと思いました。

松尾:物語を見せる、とは?

木下:リアルな世界でも、「全く知らない相手」よりも「自分が知っている身近な相手」に対して感情移入をしやすいですよね。制作の過程や想い、バックグラウンドも含めて発信することで物語性が生まれ、より身近に感じてもらえると思います。

松尾:それはありますね。フォロワーという立場からプロジェクトを定期的に知るうちにブランドにも親近感を抱き、応援してもらえるとしたら、まさに理想的なタイアップですよね。

プロジェクト企画会議の様子

「#タイアップ」に敏感なフォロワー

松尾:今回制作したコンテンツはソーシャルメディアなどでとても反響がありました。最初に出した動画では、初動で1万近くの「いいね!」がつきました。木下さんは、どのような反応が印象的でしたか?

木下:純粋に「おもしろかった」という感想や、「木下をキャスティングするとはセンスがある」みたいなコメントもありました(笑)。「タイアップなのに全部見てしまう」という反響もありましたね。機能性を紹介した上で「買いました!」という声もあり、やってよかったなぁと思いました。

松尾:「タイアップなのに」という言葉は示唆に富んでますね。ソーシャルメディアでは、特にタイアップ案件に対して、「対価のために、本当のことを言っていないのではないか…」と厳しい目を向けられることもあります。

木下:タイアップのハッシュタグがついた投稿にフォロワーはとても敏感ですし、ネガティブな印象を抱く人は少なくありません。

例えば、投稿内容を細かく取り決めて「拡散だけ」するようなタイアップの仕方だと、インフルエンサーの持ち味がかき消されて、フォロワーも違和感に気付いてしまうんですよね。結果、依頼した企業側にとっても期待を下回ってしまうケースもあると思います。

依頼前にインフルエンサーの「文脈」を理解したい

松尾:木下さんの中で、「どの案件を受けるか」を選定する際の基準はありますか?

木下:大きく2つあります。まず一つ目は「生活者と同じ目線で発信ができるか」という点です。これまでお受けしてきたのは、僕自身が”1人の生活者”として「使いたい」「伝えたい」と思ったものだけです。自分が本当にいいと思ったものだけを発信し続けることで、「この人が紹介するのなら大丈夫」という信頼感にもつながってくると思うんですよ。

もう1つは「自分らしさを崩さずに投稿できるか」という点です。僕は「育児に笑いを」というコンセプトを掲げているので、「育児で疲れたパパママを、ちゃんとクスっと笑わせられるか」という点を損なわないで投稿できるかどうかを見極めるようにしています。

何でも案件を受けていれば超お金持ちにはなれるかもしれませんが、それではフォロワーが離れていきますし、自分のキャラクターとは懸け離れた投稿にもなっていきます。いずれ自分の首を絞めることになるので、案件の選定はかなり厳しく行っています。なので、残念ながらお金持ちにはなれていません(笑)。

松尾:依頼する側としても、フォロワー数だけを基準に選定するのではなく、インフルエンサーの方が普段どんなスタンスで、どんな投稿をしているのかという「文脈」を理解して依頼することが大事ですね。

企業やブランドが解決したい課題と、インフルエンサーの文脈がしっかり一致したとき、企業/ブランド、インフルエンサー、生活者のみんなにメリットがある「Win-Win-Win」のタイアップが生まれると思います。また何か一緒に仕事したいですね!

木下:ぜひやりましょう!


今回は、“子育てインフルエンサー”としても人気のタレント、木下ゆーきさんにお話を伺いました。

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