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ロングセラー製品は再活性化できるのか?「意味のリニューアル」による情報開発とは

記事のポイント
・モノやサービスがコモディティ化する昨今、既存製品の再活性化には、製品自体は変えずに情報を変える「意味のリニューアル」が有効である。
・ある個人(n=1)の志向に着目し、顕在化していない欲求を捉えることで、製品が持つ「新しい意味」の発見につながる。
・変化の激しい社会に存在する「満たされぬ願望」と、自社の事業やブランドの特性で下支えできる「新しい意味/価値」の適切な接点を探し出すことが重要。

 生活者にとって似たような製品やサービスが市場に増えることで、かつて付加価値の高かった商品の差別化要因がなくなっていく「コモディティ化」は、あらゆる企業が抱える課題です。今回は、コモディティ化する既存製品を再活性化させる方法として、製品自体は変えずに、製品の持つ「意味」をリニューアルする情報づくりについてお話しします。

製品の「内容」ではなく、「意味」をリニューアル

 こんにちは、PRプランナーの高橋です。
生活に必要なモノやサービスは市場にあふれ、生活者にとっては選択肢が多く、製品情報も得やすい時代になりました。一方、企業にとっては製品のライフサイクルが短くなり、せっかくの新製品もほどなく陳腐化してしまう厳しい市場環境ともいえます。実際、自社のロングセラー製品にテコ入れしようとしても、市場に長く認められているからこそ新たな挑戦をしにくい、ニュースやソーシャルメディアでの話題化が難しい、というような悩みもよく耳にします。

 ゼロから製品開発をしようとすると大きなコストと時間がかかる中、有効なのが「意味のリニューアル」です。製品自体を変えなくても、メッセージや情報を変えることで、新たな顧客層や市場から受け入れられ、世の中の生活者と新しい形での関係構築を図ることができます。

 例えば、インスタントカメラ「チェキ」は、スマホの普及により市場規模が大きく縮小していました。しかし「被写体を記録して人と共有できる」という既存の機能的価値だけでなく、「メッセージを入れられるかけがえのない贈り物」という新しい「意味」を見いだし、新たな顧客層を獲得しました。製品の機能は変えなくても、「意味」や「価値」を再提示することで、既存製品がリニューアルされた例です。

個人(n=1)の志向から見つける「新しい意味」の兆し 

 では、製品の新しい意味はどのように見つければいいのでしょうか。
 モノに対する生活者の欲求は変化しています。ある程度明確なニーズや必要性に基づいて製品がつくられ、結果として「役に立つ」ことが評価されていたこれまでの時代に比べ、今の生活者の志向は必ずしもそうではありません。工業プロダクトの品質が各社ともに高度化した結果、壊れず、かつ役に立つのは当然のことになり、むしろ「その製品が自分自身に何をもたらしてくれるのか」という、製品の存在意味を問うアプローチが求められてきています。

 そこで重要になるのが、変化する生活者の欲求をどのように捉えるかです。これまでの製品ニーズの分析は、生活者の志向を定量的に計測し、ターゲットの量的に多い層や平均的な層を参考にしてきました。しかし、今起こりつつある生活者欲求の変化を知るには、「製品の既存の使い方、在り方はこうあるべき」といった企業やブランドの思惑から離れ、個人個人の自由な捉え方(=志向)に着目する視点も必要です。そのため、定量調査による量的多数からのアプローチではなく、「n=1」つまり一個人の内的志向からのアプローチを行います。

 まだ世の中には顕在化していないインサイトを発見し、それを充足させるような既存製品の新しい使い方、在り方を提示することによって、これまでとは違う製品価値を提供することができます。

製品ニーズ分析の変化_2

具体的な手順は以下の通りです。まず、ある個人(n=1)のお気に入りの事象に着目することで見えてくる隠れた欲求・志向を探します。それは本人にとっても自覚されていない欲求のスイッチで、言われて初めて「そうだ、それ!」と気付くような心理です。ここでは、あくまでも一個人の具体的な事象から考えることが大切で、その個人心理の深層から、当該製品が有している新しい「意味」の「兆し」を拾い出します。

  ただし、この個人的な兆しは、より多くの人から共感されるものでなくてはなりません。世の中からの視点で見たときに、幅広い消費者が期待するイメージやニーズに合うような「市場性」のポテンシャルがありそうだと判断したら、最後にニュースバリューのある情報に仕上げます。

 情報過多の中でより多くの人に届けるには、メディアが取り上げたくなる要素や生活者が思わずシェアしたくなる要素をプラニングの段階で盛り込むことが重要です。そのような要素を6つにまとめた電通グループのオリジナルメソッド「PR IMPAKT®」を活用すると、発信する情報のニュースバリューの検証や、既にある情報にどのような要素を強化すると「ニュース性があるか」を考えるヒントになるので、是非ご覧になってみてください。

生活者の「満たされぬ願望」とブランドの接点を探し出す

 当チーム「Q」では、「意味のリニューアル」の発見プロセスを誰でも実践できる独自の研修プログラム「News Value Sprint」を行っています。これは、“n=1視点” と“世の中視点” とのアイデア開発プログラムを合体させたもので、電通PRコンサルティングと、インサイトリサーチによるアイデア開発支援を手掛ける「デコム」が共同開発しました。

NVSロゴ

 News Value Sprintの目的は、製品、サービスのイノベーションに頼らず、人々に共感を巻き起こす引き金となる情報を創り出すことです。デコム大松孝弘社長によれば、共感の引き金になるのは、「かなえたいがかなっていない願望が満たされる」ということです。生活者が表立って口にはしないが、心の奥でふつふつとしている「かなえられていない願望」とは、生活者自身も諦めたり、押し殺していたりしている欲求です。激しく変化する現代社会にあまた存在する「満たされぬ願望」と、自社の事業やブランドの特性で下支えできる「新しい意味/価値」の接点を探し出すことが重要です。

NVS図3

こうしたプログラムも参考にしていただきつつ、「意味のリニューアル」という視点を、ロングセラー製品の再活性化に取り入れてみてはいかがでしょうか。

 「News Value Sprint」の詳細についてはこちら

【Qnote】デコム図


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