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チェック!PRイベント設計で押さえておきたい3つの「E」

今回のテーマは「PRイベント」。メディア露出やソーシャルメディア拡散など、話題づくりに欠かせないPR手法の一つです。

はじめまして。イベントプロデューサーの斉藤です。20年以上にわたり、1000件以上のイベントに携わってきました。

昨年、新型コロナウイルス感染症が感染症法上の5類に移行して以降、イベントにまつわる制限が解除され、今ではPRイベントの開催状況もコロナ禍前の水準に戻ってきています。
実際の「体験」を通して商品・サービスへの理解を深め、またメディアやステークホルダーとの良好な関係を構築するために、「価値ある体験機会」としての「リアルイベント」の役割が再認識されているとも言えます。

また、コロナ禍で急速に進んだデジタル化の波は、PRイベントにも変化をもたらしています。特に近年は、XR(※)やAIなどのテクノロジーを活用したイベントが増えました。

このようにPRイベントが進化、多様化する中で、PRイベントの設計で押さえておきたい3つの視点をご紹介します。
 
※XRとはVR、AR、MRなどの先端技術の包括的な総称。現実と仮想世界を統合(クロスリアリティ)し、新しい体験を創造する技術のこと。

■PRイベントの対象は「メディアのみ」から「ステークホルダー全員」へと変化


PRイベントとは「さまざまなステークホルダーに『価値ある体験機会』を創出するもの」とも言えます。
以前はPRイベントというと、「主に報道機関等のメディア向けのもの」を想起されがちでしたが、現在はソーシャルメディアの普及により、情報の伝達や拡散といった従来マスメディアのみが担っていた役割が一般生活者にまで広がっています。そのため、PRイベントも、生活者をはじめ自社の社員や投資家などを含めたステークホルダー全員を対象とするものへと変化しています。

「PRイベント」といっても、 その種類はさまざまで、例えば主なものとしては下記などが挙げられます。

〇主なPRイベント例


●記者発表会・記者会見
新商品や新サービス、新CMの発表、社長交代・謝罪・説明の場などとして、主にメディア向けに開催されるイベント。
 
●プロモーションイベント
イベントスペースなどで、商品のサンプリングやサービスのタッチ&トライなどの体験型コンテンツ、ステージコンテンツ等を実施するイベント。販促活動の一環として行われることが多い。
 
●インフルエンサーイベント
インフルエンサー向けに、プログラムやコンテンツを設計した、新商品や新サービスの発表の場。インフルエンサーを通してソーシャルメディア上での話題化・情報拡散を図る目的で行われる。

※その他、主なPRイベントの種類については別記事で紹介予定です。
 

■PRイベントで押さえておきたい3つの「E」


さまざまなPRイベントを設計するために、広報・PR担当者が押さえておきたい3つの視点があります。それぞれの頭文字を取って3つの「E」として紹介します。

①Entrance


PRイベントはステークホルダーとの新しい接点、つまり「入り口」(Entrance)、きっかけづくりの場となります。そのためPRイベントの設計においても「PR」=「世の中との良い関係づくり」が欠かせず、企業やブランドの“独りよがり”な設計では成功しません。
イベントを通して、ステークホルダーやメディアの関心事や問題意識を踏まえ、どのような情報発信がポジティブな反応を引き出し、好意形成できるのかを考え、イベント設計することが大切です。

「PR」=「世の中との良い関係づくり」については過去の記事でもご紹介しています。

●事例
熱中症対策と関連付けた「こども気温」
商品の機能を一方的に訴求するのではなく、社会課題や潮流と関連させてブランドメッセージを届けた事例。
清涼飲料水ブランドの「GREEN DA・KA・RA」は、夏に猛暑日が続いたことを踏まえ、熱中症対策という社会課題と関連させたメッセージによるPRイベントを実施。
子どもは大人と比べて、地面からの距離が近く、太陽の照り返しを受けやすい特有の暑熱環境にあることを「こども気温」と称し、啓発イベントを開催。それに伴い、期間限定で特別自動販売機の設置や、啓発動画の制作・YouTube配信など多角的なPR施策を行った。
https://www.dentsuprc.co.jp/ourwork/case20230713.html

②Earned & Shared


Earnedとは、主に報道機関や第三者メディアによる発信、Shared とはソーシャルメディアやクチコミサイト等を指します。Earned & Sharedメディアを通すことで、直接イベントに参加/来場できない生活者にも情報を届けることができます。
そのため、PRイベントを設計するに当たっては、メディアが取り上げたくなる「メディアバリュー」や、インフルエンサーや生活者が周りにシェアしたくなる「シェアバリュー」の視点を入れましょう。

例えば、メディアにとってインパクトのある情報を切り口にしたり、有識者や専門家による説得力あるコメントを活用したり、社会性や季節性などモーメントを押さえた情報設計を行うことで、メディアでの取材・報道獲得、ソーシャルメディアでの拡散につながる可能性が高まります。

情報流通については過去の記事をご参照ください。

 ●事例
ギネス世界記録にチャレンジ「一番くじ」
インパクトある結果を切り口にした事例。
発売20周年を迎えた「一番くじ」は周年プロジェクトの一環で、くじ券2万2610枚を使用し、「くじ券で作る最大のモザイクイメージ」としてのギネス世界記録に挑戦。イベント実施に際して、記録達成が認定され、「一番くじ」の楽しさを届けた。
https://www.dentsuprc.co.jp/ourwork/case20231214.html
 

 ●事例
フルーツと栄養に関するイベントに管理栄養士が登壇
専門家からの説得力あるコメントを活用した事例。
栄養関連プロジェクトの発表イベントにて、管理栄養士が登壇。イベントに出演したタレントの食生活を添削し、アドバイスを行うことで、プロジェクトの説得力を高めた。

③Engagement


最後は「エンゲージメント」です。ステークホルダーのエンゲージメントやロイヤリティを高めるCX(カスタマーエクスペリエンス)も、PRイベント設計には欠かせないポイントです。
メディアや生活者にポジティブな印象を与える仕掛けを施し、PRイベントを、好意を持つきっかけとなる「価値ある体験機会」とすることで、一過性で終わらない継続的で良好な関係をつくることができます。

記者発表会であれば取材しやすい環境を整えるメディアファーストな運営、誠実なメディア対応の姿勢、プロモーションイベントであれば参加者の記憶に残るコンテンツ体験、インフルエンサーイベントであればホスピタリティの高いお土産やコンテンツ設計など、おもてなしの心を持ってきめ細かい仕掛けを行います。
 

●事例
インフルエンサー向け夕食会
海外の政府観光局が、世界中の食にまつわるメディアやインフルエンサー数十人を招待し、一晩限定のディナーイベントを実施。美しい景色の中で、地元食材を使った一流シェフによる特別メニューを提供することでその国の食文化や伝統を伝えるとともに、メディアやインフルエンサーの好意度や、エンゲージメントを高めるイベントとなった。

●事例
限定感あるサンプリング体験イベント
アイスクリームのポップアップイベントで、工場で冷凍する前の、滑らかな状態の製品を数量限定で無料サンプリング。体験型ポップアップイベントはよくあるが、流通されていない状態の製品を味わえるという、ここでしか得られない特別な体験を付加することで、生活者にとっての価値を高めた事例。

■より効果的なPRイベントにするために


今回はPRイベントの設計で押さえておきたい、3つのE(Entrance、Earned & Shared、Engagement)を紹介しました。

これら3つの視点を大前提として、企業やブランドが発信したいメッセージ、目指すべきステークホルダーとの良い関係性を明確にすることで、PRイベントがより効果的な設計になればうれしいです!
 


最後までお読みいただきありがとうございました。

PRX Studio Q (電通PRコンサルティング)では、企業やブランドのPR戦略立案から企画、実行までをワンストップで対応いたします。今回の記事でご紹介したPRイベントも、ご要望に合わせて柔軟に対応いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。