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若手と中間管理職の狭間。見落とされがちな「中間中間管理職」の鬱憤

SDGsやDEIの視点が重視される昨今、企業価値やブランド価値を向上させるには、事業活動を通じて社会的な課題を解決することが求められます。
そうした企業/ブランドのPRアクションのヒントになるように、このnoteでは、個々の生活者の中にひっそりと存在しているけど、まだあまり言語化されていない「n=1の鬱憤(うっぷん=モヤモヤ)」を研究する連載を始めます。

毎月違うテーマで、生活者の"イシューの芽"となりそうな「みんなの鬱憤」をご紹介します。

とはいえ、まだ顕在化していないイシューを発掘するのはなかなか難しいもの。そこで、鬱憤を発想/言語化しやすくする当社のオリジナルワークショップ「鬱憤構文ワークショップ」を活用しながら鬱憤を発掘していきます。
補助フレーズが書かれた「鬱憤構文カード」を使って、カードゲーム式に鬱憤を出し合います。

「鬱憤構文ワークショップ」について、詳しくはこちら。

では、今月の「みんなの鬱憤」は…?

今月の鬱憤は…「中間中間管理職」の鬱憤!

聞き慣れない言葉かと思いますが、企業の経営層と社員の中間に位置する管理職を「中間管理職」というのに対し、中間管理職と若手社員のさらに中間に位置する社員を「中間中間管理職」と呼んでみました。

正式な管理職ではないけれど、若手社員とマネジメント職の間に立ち、マネジメント職の仕事をサポートしたり、若手の育成やケアも担ったりしている、そんな世代が「中間中間管理職」です。

マイナビの調査によると、2023年の転職者の割合で最も多かったのは、30代の男性で全体の23.3%。次いで、20代男性が18.9%、20代女性が15.1%を占めます(※1)。

厚生労働省のデータによると、係長職の平均年齢は約37~40歳(※2)なので、入社して一人立ちするまでに数年かかるとすると、中間中間管理職の年齢は主に20代後半~30代前半が想定され、まさに転職を検討しやすい年代と重なります。人材の流出を防ぎたい企業としては、特に重視したい世代ともいえそうです。

昨今、マーケティングでもインターナルコミュニケーションでも、「Z世代」や新入社員の動向が注目される傾向にあります。

一方、そのもう少し上の中間中間管理職の世代は、社内でも第一線で活躍し、転職市場でも重視されるべき人材のはずなのに、実はその声が見落とされがちなのでは…?

そんな仮説に立って、中間中間管理職に当たる社会人5~10年目の男女5人と、鬱憤構文ワークショップを実施し、鬱憤を集めてみました。

※1:マイナビキャリアリサーチLab「転職動向調査2024年版(2023年実績)」https://career-research.mynavi.jp/reserch/20240312_71344/#i-4
※2:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」ps://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2023/dl/07.pdf
では、中間中間管理職の5人から実際に出てきた鬱憤を紹介していきます。

信頼されているゆえに、放っておかれる問題

最も多かった鬱憤は、ある程度の在職年数になり、会社から信頼されているがゆえに「放っておかれる」というもの。

入社5年目のCさんは、責任を伴う仕事を任される一方、新人の教育やケアも任され「正直いっぱいいっぱい。でもそのしんどさを上司になかなか気付いてもらえない」と吐露。「むしろ、その調子で頑張って!という感じで、心配してもらえない」と悩んでいました。

これにはもう少し上の年次の人からも「分かる!」と共感の声が飛び交い、この意見に刺激されて「そう言われると、つらいって言えないんだよね」「無理すればするほど、心配されるのではなく、ここまでやってこれたんだから大丈夫!と逆に信頼が増しちゃう」と、頑張るほど上司から信頼され、信頼されるほど悩みを話したり相談したりしにくくなり、一人で抱え込んでしまう悪循環に陥るという問題も浮かび上がりました。

仕事で求められる能力や負荷がぐんと高まり、余裕がなくなる問題

日々の業務に慣れ、自分なりの付加価値を生み出せるようになると、求められるレベルも高まります。

社会人4~5年目ごろから「求められるスキルや仕事の負荷がぐんと上がる」との声も。

入社5年目のBさんからは「もっと自分の視座を高めたいのに、後輩のフォローなどでインプットや自己研さんの余裕がなくなって、成長できているのかモヤモヤする…」と切実な声が。

9年目のAさんも「分かる!自分で考えたり作ったりする時間よりも、他の人の仕事を確認する作業の割合の方が大きくなっちゃう。もっと自分の仕事に集中したいよね」と共感。
転職経験のある9年目のDさんは、Aさんの鬱憤を聞いて「マネジメント職でもないのに、マネジメントみたいな仕事を任されちゃうときもあるよね。転職する前の会社で、後輩の業務量や休暇の管理を任されたときはさすがに、『マネジメントの研修も受けてないのに…』と困惑した」と話しました。

自分の存在って軽視されてる…?「ケアの空白世代」を感じる問題

企業からの期待値が高く、自立していると思われているからこそ、会社から軽視されているように感じるという声も。

5年目のCさんは「新入社員は、上司からも人事からも心配されたり、ちょっとしたことで褒められたりしていて、比べてもしょうがないんだけど…自分はあんまり気にかけられていないな…と寂しくなる」と話しました。9年目のAさんも「たしかに褒めてもらう機会、減ったかも!あと、仕事に慣れても助けを求めるのがうまくなるわけじゃないよね」と共感。

8年目のEさんは「多分会社としては、新入社員には『ケアしないと辞めてしまうかも』という懸念があると思うんだけど、中堅には『ずっとこの会社にいてくれる』という前提で接しているから、なんとなくないがしろにされている気持ちになっちゃうんじゃないかな」と分析。

9年目のDさんもこの意見に共感し「中堅って会社への貢献度めちゃくちゃ高いはずなのに、ケアの対象として見落とされがちだから、モチベーションが下がって転職を考えやすそう」と話しました。

まだ環境に慣れない在職年数の短い社員には手厚いサポートがあり、管理職に対してはさまざまな研修があるのに対し、自分たちは「ケアの空白世代」と感じる人が多いようです。

中間中間管理職、「孤独」を感じている人は半数以上!

今回出てきた鬱憤は実際に世の中に存在しているのか、簡易的な調査をしてみました。

社会人5~15年目で、職場で「自分の仕事」「上司のサポート」「後輩の指導・フォロー」といった、1人3役以上をこなしていると回答した人を「中間中間管理職」とし、調査対象としています。

調査概要
調査手法:インターネットリサーチ(QiQUMO)
実施期間:2024年10月25~28日
調査対象:20~40代の男女300人
調査実施機関:株式会社クロス・マーケティング

1人3役以上をこなすことに対し、「負担が大きいと感じる」と回答したのは合計77.3%で、多数派でした。

さらに、「管理職でもないのに、後輩の業務・休暇・働き方の管理などを任され、自分の業務に集中できない」と回答したのは60.0%。マネジメントに該当する仕事までこなしている人は多いようです。

印象的だったのは、こうした負担があるにもかかわらず、「自分の頑張りが周囲に理解されていない」と感じている人が58.3%にも上りました。

また、「上司や後輩から頼られていると思う一方、あまり大事にされていないと感じることも多く、寂しさや孤独感がある」という人が55.7%と、いずれも半数を超えていることでした。

1人3役以上こなしていることに対して、自由回答では下記のような「周囲の態度」に関する鬱憤が多く挙げられました。孤独感の要因の一つになっていそうです。

・「やって当たり前だと思われ、感謝されない」
・「(業務過多でも)できるでしょ、と言われる」
・「しんどいときに上にも下にも相談できない」

さらに、「評価制度や働き方」への鬱憤も聞かれました。

・「マネジメント職の手当を受け取っていないのに、マネジメントの仕事を任されている」
・「在職年数や役職ではなく、実績で評価してほしい」
・「頼られていろいろ任される一方、残業しないでと言われる」

「上下の板挟み」に悩むという声も。

・「上下のどちらの立場の愚痴も聞いたとき、どう対応するべきか悩む」
・「『上のフォロー』と『下のフォロー』で目線を切り替えなければならない」

こうした状況について、改善されるために望むこと・欲しいものを自由回答で聞くと、コミュニケーションの機会を求める声が多く上がりました。

・「お菓子など食べながら周囲と雑談する時間が欲しい」
・「飲み会など社員同士のコミュニケーション費用を出してほしい」
・「他部署の人と気軽に話せる場が欲しい」

業務量の改善や評価制度の整備はもちろんですが、中間中間管理職にとっては「少しでも気にかけてほしい」「気軽に相談させてほしい」という本音も透けて見えます。

社員同士で気分転換したり、相談し合ったりできるちょっとしたコミュニケーションの場を企業が提供することも、中間中間管理職のケアにつながりそうです。

日頃焦点が当たりづらい「中間中間管理職」の鬱憤。インターナルコミュニケーションはもちろん、企業/ブランドのPRアクションをする上でも、新たなヒントとなりそうです。


「みんなの鬱憤ラボ」は毎月違うテーマで、ワークショップの参加者から出てきた鬱憤を紹介していきます。

今回ブレストに活用した「鬱憤構文ワークショップ」は、補助フレーズが印刷されたカードを使うことで、鬱憤を発想しやすくし、ブレストを活性化させる効果があります。企業やブランドのPRアクションのアイデア発想やインターナルコミュニケーションを目的に、さまざまな企業で実施実績があります。他にも、多様なワークショップメニューをご用意しておりますので、ぜひお気軽にお問合せください。