ソーシャルメディアからニュースに波及するX投稿「10のアイデア」
企業/ブランドが自社のソーシャルメディアのアカウントから投稿するコンテンツに注目が集まり、Webやテレビ、新聞のニュースで取り上げられるケースは依然として多く見られます。
そして、その投稿内容は新商品/新サービスなど新しい情報に限らないことも特徴です。つまり、プレスリリースで発信するような新しいネタではなく、社内にすでにある資源や知識でも、ソーシャルメディアでの発信を工夫すれば、それがニュースのネタとなり、より多くの人に届く可能性があります。そうすれば、自社や商品/サービスへの理解が高まり、好意的に思ってもらえるチャンスも増えます。
こんにちは、PRプランナー/ソーシャルハンターの鶴岡です。
ニュースに波及しやすい企業/ブランドの投稿とはどんなものなのか。その傾向をつかむため、電通PRコンサルティングでは、「Sharedメディア→Earnedメディアへの波及調査※1」を実施しました。
今回は、この調査結果を基に、ニュースに波及しやすいソーシャルメディア投稿の切り口を10のカテゴリーに整理してみました。
Sメディア→Eメディアへの波及調査
企業関連のX投稿が話題になり、Webメディアで記事化された事例を収集。 Sharedメディア→Earnedメディア(S→E)に波及する法則性や傾向などをデータから分析しました。
■調査・分析概要
■メディアで記事化される拡散基準
Webニュースから分析した、10の切り口
上記の調査を基に、企業公式アカウントのX投稿が Sharedメディアで拡散起点になり、 Earnedメディアに取り上げられやすい切り口の傾向をまとめたのが、下記の10の切り口です。
それぞれ詳しく解説していきます。
〔1〕プロ意識
その企業ならではの専門的な知識・知見を踏まえて、生活の役に立つようなノウハウや、注意喚起として紹介する切り口です。
⚫知られていない専門知識・Tips
世の中に浸透していないその企業ならではの豆知識・ Tips
例)特定の食品を扱うメーカーが、その食品の食べ頃や腐っているかどうかを見分けるための豆知識を発信。
⚫注意喚起
企業ならではの専門的な知見で生活者に注意を促す
例)購入後に剝がしてしまいがちな商品に貼られているシールについて、メーカーが実は剝がしてはいけない知られざる理由を発信し、注意喚起。
⚫プロだけが知るレシピ
まねしやすく、説得力のある企業・ブランドのお墨付きレシピ
例)スーパーが、意外な調味料で作れる簡単でおいしそうなレシピを発信。
〔2〕レア
商品の製造工程や構造など、裏側の事情が伝わる写真や映像のほか、カスタマーサービスでの秘話など、一般には公開されていない裏事情をあえて公開する切り口。生活者にとって有益な情報なのに意外と知られていない商品・サービスの紹介や、公式だからこそ持っている画像や動画も、生活者の関心を高めます。
⚫ 裏側
普段は見せない裏技・秘密
例)文房具メーカーが、ロングセラー商品の製造工程をショート動画で公開。
⚫ 裏メニュー・裏システム
大々的な宣伝や紹介はしていないけど、実は存在する商品・サービス
例)あるラーメン店で、「子どもはラーメンの代金が無料」という意外と知られていないサービスがあることを発信。
⚫ 裏エピソード
生活者との心温まるエピソード・やりとり
例)ロングセラー商品の発売当初のパッケージデザインを集めている食品メーカーが、収集に協力してくれた生活者とのエピソードを発信。
⚫ 公式素材の配布
公式公認で画像素材などを配布
例)あるスポーツの国際大会で、平日に開催される決勝戦を仕事を休んででも観戦したい人のために、リーグが「試合を見るための休暇届」を公式画像として制作して配布。
〔3〕桁違い
企業が持つ資産や技術力を発揮して、他の追随を許さない圧倒的な優位性を示す切り口です。一目で「スゴイ」「さすが」「本気出してきた…!」と言ってもらえるような、インパクトのあるビジュアルの投稿が多い傾向があります。
⚫ 本気出してきた
企業が資産・技術力を駆使して圧倒的な実力を見せつける
例)ある地域の観光協会が、観光資源である絶景スポットについて、地元住民だからこそ知る角度や視点から撮影し、投稿する。
〔4〕変化
すでに生活者に認知されており、愛着を持ってもらえているものに対して、変えること/変えないことを伝える切り口。社内向けの情報でもあえて公開することで、親近感や安心感を持ってもらえます。
⚫ 変化の報告
改善事項や中の人の交代、今と昔の比較など、変化を周知
例)ある団体で、ソーシャルメディアで話題になった特徴的な社食のメニューが変更された際、ソーシャルメディアで社外にも報告。
⚫ 不変の報告
長年変わらないものを「これからも不変」として改めて周知
例) あるロングセラー商品が50年以上変えていないデザインを、今年も変えないことを伝える。
〔5〕Most
その企業が突出している得意分野を際立たせて伝える切り口。「世界一」「日本初」などと捉えられるものや独自性がある題材は、ニュースとして報じられやすい傾向にあります。
⚫ 最上級
「~過ぎる」「日本一」など、最上級や独自性はメディアが取り上げたくなる要素。
例)果樹園が、生産している世界最大のフルーツを紹介。
参考:ニュースになりやすいポイント「PR IMPAKT®」
⚫ 独自・専門○○
企業独自のユニークな取り組みや研修、専用グッズ
例)老舗の食品メーカーが、自社商品を使った専門性の高い調理方法を学ぶ社内研修の内容を社外にも発信。
⚫ 独自理論
明らかにネタだと分かる強引過ぎる持論
例)食品メーカーが自社商品について、入っている材料などから「おせち料理」とも捉えられると持論を展開
〔6〕気付き
生活者が気付きや驚きを抱くような新事実や、生活者からの疑問に応えるといった切り口です。
⚫ 新事実
意外と知られていない企業や商品・サービス
例)商品自体の知名度はあるけれど、正式名称はあまり知られていない商品の正式名称を改めて伝える。
⚫ 検証してみた
生活者の疑問に対し、実際に実験したり確かめたりしてみる
例)農園が「野菜のこの部分は、食べられるの?」という生活者の疑問に対して、実際に収穫し、試食した上で回答する。
〔7〕助けて
企業がありのままの姿をあえてさらけ出し、生活者に協力を求める切り口。距離を感じられがちな企業アカウントだからこそ、チャーミングに、時には深刻に助けを求めることで、生活者との距離感が縮まります。
⚫ アンケート・アイデア募集
商品・サービスについて、アンケートの回答やアイデアをリプライ欄で募集
例)資材メーカーが自社商品の好きなところ・嫌いなところを教えてほしいとお願いする。
⚫ 自虐お願い
苦境にある状態をあえて公開した上で、自虐的に生活者に協力をお願い
例)閑散としている店内の様子が分かる画像を投稿し、「誰か来てほしい」と懇願する。
⚫ ご理解お願いします
場合によっては毅然とした対応でスタンスを発信
例)行き過ぎたカスタマーハラスメントに対して、毅然とした対応を取ることを宣言する。
〔8〕あえて
「○○ なのに △△」といった、既成概念や常識を覆したり、距離が遠いものを組み合わせたりすることで、意外性を生む切り口です。「あえて」「逆に」という発想でコンテンツを考えることで、企業の個性や魅力が伝わりやすくなります。
⚫ 常識・トレンドの逆
一般的な文脈やトレンドに合わせず、あえてずらした発信
例)人材系の企業が、一般的にはいい夫婦の日として知られている11月22日に、実は「人事戦略を考える日」でもあることを発信。併せて、より良い働き方について考えることを提案。
⚫ ニッチな層に発信
一般的な知名度は低いけれど、一部の人に熱烈に刺さるコンテンツを投下
例)あるコンテンツに関して、コアなファンしか理解できない表現を活用して発信。
⚫ 弱みを見せる
普通は隠すものをあえて正直に見せることで、理解を求める
例)飲食店のアカウントが、店員全員が花粉症であることを掲示。
〔9〕乗っかり
企業アカウントが、Xで盛り上がっている生活者の投稿やトレンドに乗っかる形で反応する切り口。トレンドを押さえることで、拡散されやすくなります。
⚫ 公式が反応
n=1の投稿やソーシャル上で議論が起きていることにすかさず反応
例)商品に関する、生活者の意見が分かれたり、関心が高まったりしている事柄に対して、販売元のメーカーがすかさず公式見解やアドバイスを発信。
⚫ トレンドに便乗
世の中やソーシャル上でトレンドになっていることに引きつけて乗っかる
例)Xのロゴが青い鳥からアルファベットに変更になる際、青い鳥がモチーフのロゴを持つ企業などが反応。
ほかにも、発信したいテーマに関し、最も世の中の関心が高まりやすくなる「モーメント」に合わせた内容や投稿タイミングを設計することも効果的です。
参考:「モーメント」活用法
〔10〕まさか
その投稿を見ることで、つい「まさか」と言いたくなるような意外性やギャップを生む切り口。発信内容自体が意外性を感じるもの、普段は真面目なイメージがある企業アカウントによるミスや、いつもと違うクオリティーの投稿、遊び心のある投稿はイメージのギャップを感じられ、生活者が親近感を持ちやすくなります。
⚫ 奇跡のコラボ
似ているネーミング・ロゴや キャラクターなどの予想外のコラボ
例)商品名が似ているとソーシャルメディアで話題になった2社が、その話題をきっかけにコラボレーションしてキャンペーンを行う。
⚫ 信じられないミス
文字の打ち間違いなどミスの内容自体に驚きがあるケースのほか、その謝罪方法に意表を突かれるケース。ミスが起きた際に、謝るだけでなく間違った経緯を公開したり、少しやり過ぎなくらい正直に伝えたりと、形式的な投稿ではなく中の人の人格が見えるような投稿であることがポイント
例)投稿文の誤変換後、謝罪とともに、投稿者がバタバタしていたり、余裕がなかったりした状況を詳細かつチャーミングに説明。
ただし、注目を集めるためにわざとミスをしたり、謝罪の姿勢に誠実さが感じられなかったりする場合には、一転して炎上してしまう場合もあります。見た人がどんな感情になるか、発信前に客観的にチェックすることも欠かせません。
参考:感情リスクチェック
⚫ 公式とは思えない「雑クオリティー」「雑コラ」
公式なのにまさかの雑な発信
例)状況を説明するために、雑なコラージュで合成した写真を投稿する。
⚫ 「斜め上」「天才」の発想
意表を突かれる商品・サービスや目からウロコの裏技
例)食品メーカーが、皿を出さなくても食べやすくなる、意外な「商品袋の開け方」を動画で紹介。
⚫ 粋な計らい
他の企業・団体や一個人を粋な方法で応援/感謝する
例)投稿文の行頭の1文字ずつを縦読みをすると、話題になっている人や他の企業を応援するメッセージになっている。
目的は、 ✖「話題になる」〇「届ける」
企業アカウントを運用する上で、「ソーシャルメディアでいかに話題になるか?」ということを考え工夫していくことは重要ですが、「バズらせる」こと自体が目的になってはいけないと考えています。
あくまでも目的は、「生活者に効果的に情報を届ける」こと。そのためには、今回紹介したソーシャルメディア起点の発信を含め、PESOメディア全体を俯瞰(ふかん)した情報流通設計がポイントになります。
また、一つの投稿に全身全霊を傾けてバズを生み出すことを目指すのではなく、日々の投稿を繰り返していく中でPDCAを回しながらさまざまな発信にチャレンジしていくことも重要です。
参考になるアカウントをピックアップして内容をチェックしてみたり、企業/ブランドと関連付きそうなイシューやトレンドを追いかけたりしながら、継続して分析していくことがオススメです。
ソーシャルメディア発信のコツについては、こちらのマガジンにもまとめています。
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